注意機能とトレーニング⑵ 外因性注意と内因性注意

注意機能とトレーニング⑵ 外因性注意と内因性注意

以下の内容をメルマガで配信致しました。

 

スクワット中に「注意」を大腿部の筋肉に向け意識していた最中に突然、横のラックでスクワットをしていた人がバーベルをラックに戻し損ねて「ガシャーン」という大きな音が聞こえてその方向に視線を奪われた、という経験がある方もいらっしゃるかと思います。

 

 

このように外部の刺激によって反射的に注意が奪われることを外因性注意と言います。上記の場合は音が刺激となっているため聴覚刺激による外因性注意ということになります。

 

 

試合や練習を見ていてよく思うのが、例えば選手がスクワットやデッドリフトでギリギリの挙上をしている際に周りにいる人が突然大声(特に破裂音系の掛け声)で声援を送った直後に試技者が失敗している状況を見かけることがよくあるのですが、これは突然の大声により外因性注意が駆動して動きの外乱刺激となったことに起因しているのではないかと予想しています。将来的にこの現象は研究したいと考えています。

 

 

そのため私は試合時などでセコンドを担当する場合に選手の試技中に大声で掛け声をかけません。冷たいセコンドと思われるかもしれませんが、最終的に選手が成功することを優先するのがセコンドの仕事ですので。外因性注意とはまた違った反応ですが、選手の試技中に技術的な要素を口に出すこともしません。技術的なことを声援で送る場合、選手が注意を向けていることと違った場合に、注意資源の分散が起きてしまいこれもまた外乱刺激として選手の動きを妨害する可能性が大きいと考えています。ただセコンドを担当している選手がよほどの初心者で技術的にこの一点だけに注意を向けて欲しいという場合は予めそれを伝えて、さらに掛け声時に同じことを言うケースはあります。

 

 

視覚刺激による外因性注意の例も上げておきたいと思います。

 

 

例えば、スクワットをしている目の前にいきなり人が通りかかるというような刺激も外因性注意が駆動する原因となる場合があります。少しイメージしていただきたいのですが、あなたが大量に人が行き交う交差点でスクワットをする機会を得たとします。この場合、常に人が行き来している状況が目の前に繰り広げらているので、スクワットをしている目の前を人が歩行していても注意が奪われることはないでしょう。逆に体育館で一人でスクワットをする状況の最中に目の前を誰かが突然横切ったら注意を奪われそうですよね。このように外因性注意は環境の背景情報にも影響を受けるといえます。

 

このようにヒトのパフォーマンスとは周辺環境の影響を常に受けながら発揮されていると言えます。失敗原因を探る際に周辺環境にも目を向けてみるということも大切です。もちろん見つかった原因を「〜のせい」などと言っていては成長の可能性を潰してしまうので、次にそれが起きないように自分でコントロールできることはする、できないことにはどう対処するか考えることがとても大切かと思います。ちなみに脳にとって情報というのは無意識でも処理をされるということを把握しておくと環境の重要性をさらに認識できるかと思います。

 

 

反射的に注意が奪われること外因性注意に対して、内因性注意は、対象に対して意図的に注意を向ける(コントロールする)ことを言います((知覚・認知心理学/石口彰より引用)。

 

 

 

次回は選択的注意と分割的注意に関してご紹介していきます。

 

 

阿久津貴史


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