注意機能とトレーニング⑶選択的注意を理解して目標達成に活かす

注意機能とトレーニング⑶選択的注意を理解して目標達成に活かす

10月3日に以下のメルマガを配信いたしました。

本日10月9日17時45分に「注意機能とトレーニング⑷ 分割的注意 注意資源の使い方」を配信予定です。

 

東京は今日(10月6日)は良い天気でしたね、私は外でもまだT-シャツとハーフパンツで過ごしています。





さて注意機能とトレーニングメルマガのシリーズ3回目は選択的注意に関しての理解を進めていきたいと思います。元々は分割的注意までを同じ回として配信予定でしたが校正している間に少し長くなってしまいましたのでそれぞれ分けて配信致します。






このメルマガを読んでいただいている時に、あなたの注意は今まさにこの文章に向けられています。文頭の天気に関する行を読んでいただいた際は空を見られたかもしれません。視界にはたくさんの視覚情報がありますが、今は選択的に注意をこの文字に向けています。このように多くの情報から必要な情報を優先的に選び処理することを選択的注意と呼びます。






選択的注意には影響する2つのトップダウン要因とボトムアップ要因がそれぞれあります。






トップダウン要因の1つ目は、例えばトレーニングを指導している対象者やトレーニングパートナーが実行しているベンチプレスの動作速度がだんだん遅くなり動きがプルプルしてきた時、あなたは、そろそろ力尽きてバーベルをラックに戻せなくなるかもしれないから補助できる体勢を整えよう、というようなことを考えますよね。こういった経験則による「予期」は選択的注意に影響します。






2つ目は、例えばジムに自分の好みの容姿をした会員さんが現れた時には自然と注意が向けられますよね。このような「価値判断」も選択的注意に影響します。この予期と価値判断の2つが選択的注意に影響するトップダウン要因となります。






好みというような価値判断は万人に共通するわけではないので、トレーニング仲間に「こんな子きてたよね!」と話しても「そんな子いた?」と返されたりした経験のある方は多いのではないでしょうか。友人にとっては選択的注意が作動する対象ではなかったということですね。







次にボトムアップ要因について考えてみます。例えばトレーニングルームでコーチを探す時に、選手全員が黒色のトレーニングウエアを着ていてコーチだけ赤色のウエアを着ていれば一瞬でコーチの場所を特定できます。「こうした場面において対象物に素早く選択的注意が向けれるかどうかは、探索すべき視覚刺激の中でターゲットがどの程度目立つ存在か(顕著性が高いか)という、ボトムアップの影響を受ける(運動支援の心理学P89/樋口貴広著から引用)」とあるように選択的注意が向けられるかどうかは周辺環境の文脈の影響を受けます。






目標達成においてもその人の価値判断に基づいた目標設定であればあるほど注意資源がそこに集中するために達成しやすくなるのではないでしょうか。逆に他人から与えられた興味のない目標には、注意を集中させられないというのは選択的注意のトップダウン要因が働かないため当然です。そして目標達成に向けて大切なポイントは、生活環境の中で選択的に注意が向く時間をできるだけ増やせるかということだと思います。環境を整えるということは、目標達成に向けて必要な要素に選択的に注意が向くようにトップダウン要因とボトムアップ要因を生活の中に設計するということです。例えば同じような目標を持った人と一緒にいる時間が多ければ会話の内容も目標達成に向けたものばかりになりますよね、つまり目標に向けて考える時間(選択的注意を向ける時間)が増えるということです。






次回は分割的注意に関してお届けしていきます。

 

阿久津貴史


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