注意機能とトレーニング⑷ 分割的注意 注意資源の使い方

注意機能とトレーニング⑷ 分割的注意 注意資源の使い方

10月9日月曜日17時45分に下記のメルマガを配信いたしました。次回は注意機能とトレーニング⑸インターナルフォーカスとエクスターナルフォーカルを配信予定です。

 

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3連休は皆さまいかがお過ごしだったでしょうか?私は世界選手権を控えているということもありいつも通りの生活を送っています。土曜日は夜にベンチプレス、本日(10月9日)は夕方からスクワットとデッドリフトをメインとした練習を実施します。



注意機能とトレーニングメルマガのシリーズ4回目は分割的注意に関して理解を深めていきたいと思います。



例えばベンチプレスをする際に、


①足裏で床を捉え続ける

②肩甲骨の動きを意識する




というように2つ以上の課題に注意を向けることを分割的注意と言います(意識と注意の違いは1回目のメルマガをご参照ください)。



分割的注意を行う場合は当然の如く注意資源が分散されますので1つのことだけに注意を向ける場合よりも動作遂行の難易度が上がります。こういったデュアルタスク課題を実行する際に1つの課題を自動化(特に注意を注がなくてもできるレベル)できるところまで習得できている場合は2つの課題に対してイコールに注意資源を分散する必要がなくなるため課題の同時遂行がしやすくなります。こういったご経験は皆さまもされているかと思います。



トレーナーという立場から考えるとクライアント様が1つの種目に対して複数個の改善点があるケースにおいて、同時に全ての課題に対して指示出しするというのは注意機能の観点から適切な方略と言えません。まず複数個ある改善点の全てに影響をしている優先課題を見つけ出し、その優先課題の克服に一点集中し、ある程度自動化するレベルまで習得できたら他の課題に分割的注意を払う方が中長期的な結果のための良い戦略と言えるでしょう。



且つてあのイチローさんもテレビか何かの映像媒体で「同時に2つのことをできるようになるなんてことはない(イチローさんの正確な表現を記憶していないのでその通りではないことをご理解ください)。」というようなことをおっしゃっていましたが、注意機能と学習の関係を経験的に良く理解しているからこその発言だと思います。

 

逆にどのような分野でも初心者の方ほど早く上手になりたい気持ちがゆえに一度に多くのことを同時に学習しようとする傾向があるようにも思います。これは同じくトレーナーさんの指導法にも言えることで初心者トレーナーさんほどクライアント様を満足させるためにたくさん改善点を伝えた方が良いと思っていたりするのですが、先述の通りそのような指導法を採用するとクライアント様にとっては課題が多すぎて結局一つも習得できない結果を招く可能性が大きいと考えられます。

 

私もトレーナーとして駆け出しの頃はそういうことが多かったと記憶しています。たくさん知識があってたくさん教えられることがあっても本当に伝えることだけに的を絞って伝えられるのが注意機能に沿った理想的な指導法の一つかと思います。



いつものように話が逸れますが「二兎を追うものは一兎も得ず」という西洋の諺がありますが、この諺はまさに人間の持つ注意機能をよく表していると思います。とはいえ側から見て分散した行動をしているような人であっても、実はご本人にとって一つの大きな目標に向かって実行し協応させているという「おーっ!それは凄い!」と唸ってしまうような方もいらっしゃいますよね。



分割的注意を理解し、注意資源の矛先を決めることは目標達成において根幹をなすとても大切なことかと思います。次回はインターナルフォーカスとエクスターナルフォーカスに関してご紹介していきます。



阿久津貴史


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