2024年7月26日から開催されるパリ五輪。アスリートのみならず世界中が注目する大会ですが、オリンピック競技大会の中でも大きな問題となっているのがドーピング問題です。
過去にも好成績を残した選手がのちにドーピング違反していたことが発覚し、選手資格のはく奪や成績や記録の取り消しを受けたという事例が発生しています。
出場するアスリートはクリアな状態で正確なスコアを出すために使用している薬やサプリメントの服用など、細心の注意を払わなければいけません。
今回はドーピング検査とはどういったものなのか、またドーピング検査で禁止されている成分、過去の違反事例について解説していきます。
著者紹介
パワーリフティング全日本選手権12連覇
NSCA-CSCS・NSCA-CPT/認定スポーツメンタルコーチ
阿久津貴史 (公式HP)
1982年生まれ。元パワーリフティング選手(2023年11月の世界選手権を最後に引退)。2010年〜2023年105kg級日本代表(2021〜2023年団長)。パワーリフティング専門ジム「TXP」を運営。後進育成・コーチングも精力的に行っており、全日本優勝者を多数輩出。アスリートのパフォーマンス向上を目的とした、理想的なエルゴジェニックエイドの開発にも日々尽力している。
ドーピング検査とは
ドーピング検査は、アスリートから尿や血液(両方もしくはどちらか一方)の検体を採取し、クリーンな状態か分析します。分析は「検査及びドーピング調査に関する国際基準」に則って行われます。
ドーピング検査が正しく行われるために、実施する大会や対象となるアスリートの方の情報は事前に公開されないように徹底されています。また、アンチ・ドーピング機関が認定した検査員(DCP)のみが検査を行えます。
ドーピング検査には大きく分けて「競技会検査」と「競技会外検査」の2種類あります。
競技会検査
競技会検査とは、競技会で実施される検査です。競技会検査の場合は、競技会場内のドーピング検査専用の部屋で行われることが多いです。
競技会に参加されたアスリートの方がドーピングしておらず、クリーンであることを証明し、パフォーマンスや記録が正しいこと、本物であることが証明されます。
競技会外検査
競技会外検査とは、競技会以外のドーピング検査を行うことで、アスリートの自宅やトレーニング場所、合宿場所、職場など、さまざまな場所で実施されます。
クリーンなアスリートのみが参加できるという環境作りのためや、アスリートの権利を守るために実施されます。
競技会外検査のドーピング規則違反になる規定も
一定レベル以上の選手は、練習時間や場所を「居場所情報」としてあらかじめ提出することが義務付けられています。また、選手が居場所情報を提出する際に、5時から23時の間で検査に対応できる60分を指定(指定した60分以外に検査が行われる可能性もあり)するのですが、その指定した60分に検査ができない場合は「検査未了」となります。
この検査未了が12ヶ月間の間に3回発生した場合は、意図的に検査をしなかったとみなされ、ドーピング規則違反になります。
前回のオリンピック競技大会のドーピング違反が発覚した事例
前回のオリンピック競技大会「2020年東京五輪」で発覚したドーピング違反の事例について紹介します。
チジンドゥ・ウジャ
陸上男子100メートルと400メートルリレーに出場したチジンドゥ・ウジャ選手はイングランド・ロンドン出身の短距離走専門の陸上選手です。2011年の世界ユース選手権100mで8位を獲得、2013年には欧州ジュニア選手権100メートルを制し、2017年のロンドン世界選手権では400メートルリレーで英国の優勝にも貢献していたスプリンター選手です。
東京五輪で筋肉増強に関連する禁止薬物に指定される「オスタリン」と「選択的アンドロゲン受容体調節薬『SARM S-23』」の陽性反応を示し、ドーピング規則違反になりました。
400メートルリレーの1走を務めて銀メダルを獲得していたのですが、チジンドゥ・ウジャ選手のドーピング違反を認定したことで英国の銀メダルは剥奪されました。
ブレッシング・オカグバレ
陸上女子100メートルに出場したブレッシング・オカグバレ選手は、ナイジェリア出身の短距離走および走幅跳・三段跳専門の陸上選手です。2008年の北京オリンピックにて走幅跳で銀メダルを獲得、2013年の第14回世界陸上競技選手権大会女子走幅跳で銀メダルを獲得している選手です。
東京五輪の前に行われたドーピング検査で「ヒト成長ホルモン(HGH)」の陽性反応を示し、東京五輪の準決勝を目前に大会から追放されています。また、2022年にもドーピング違反をし、10年間の資格停止処分が課されています。
マークオティエノ・オディアンボ
陸上男子100メートルに出場予定だったマークオティエノ・オディアンボ選手は、ケニア出身の短距離走専門の陸上選手です。2017年のロンドン世界選手権の参加標準記録を破る好タイムで優勝を飾っています。
東京五輪で筋肉増強作用のある禁止物質が見つかったとして暫定の資格停止処分を科されています。
サディク・ミフー
東京五輪で陸上男子1500メートルに出場したサディク・ミフー選手はバーレーン出身の陸上選手です。
東京五輪で血液ドーピングが発覚し、暫定的な資格停止処分が課されています。(※血液ドーピングとは、血液や赤血球を輸血し、筋肉により多くの酸素を供給できるようにすることで、パフィーマンスを向上させるもの)
ドーピング検査のこれまでの変更事項
ドーピング検査は年々厳しくなっており、ドーピング禁止物質リストは少なくとも毎年1回は改定されるため、どんな物質が禁止されているのか知りたい場合は最新の情報を確認する必要があります。2024年における禁止物質に関しては、「2024 年禁止表国際基準」に基づいて判断しましょう。
ドーピング禁止物質リストの中には、常に禁止される物質・方法や競技会時に禁止される物質・方法(普段使いは可能だが、競技会前や期間中は禁止されるもの)、特定競技において禁止される物質・方法が記載されています。
さらに、検査で検出されても現状は違反に問われないが、乱用されることを防止するために分析は行っている、乱用されていることが疑われれば将来禁止にされる可能性がある「監視プログラム」というものも公表されています。
▼直近の2023年から2024年にかけて変更された点
・禁止方法の例外
M1「血液および血液成分の操作」は以前より禁止になっているが、「日本赤十字社の献血ルームで実施される血漿成分献血」は禁止されないという釈明が明示された。
・監視物質
痛み止めとして使用されることもある「タペンタドール」
咳止めとして使用されることもある「ジヒドロコデイン」
糖尿病治療薬や肥満症治療薬として使用されることもある「セマグルチド」
の3つが監視物質として追加されました。
・禁止物質
「トラマドール」はアスリートにおいて乱用されている傾向が確認されており、2024年1月1日からは禁止物質に指定されています。痛み止めとして医療機関で処方される可能性がある薬大なので注意が必要です。
▼次に2022年から2023年にかけて変更された点
・禁止物質、禁止方法
「ソルリアムフェトル」という物質が興奮薬として禁止物質に追加されました。日本ではあまり使用されないものですが、海外では過度な眠気の改善目的で処方される可能性がある物質です。
「ボグセロトール」という物質が禁止される例として追加されました。日本ではあまり使用されないものですが、海外では鎌状赤血球症という病気に対して処方される可能性がある物質です。
・監視物質
「デルモルフィン」および類似物質の「ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)」や、「ハイポキセン」と呼ばれる物質が監視物質として追加されました。
このように毎年、禁止物質や監視物質などが細かく指定されていくため、ドーピング検査の規則は年々厳しくなっています。スポーツをクリーンな状態で行うためには必要なものですが、自分自身、意図しない形でドーピング違反にならないように、常に最新情報を確認し気を付けることが大切です。
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PPNのサプリメント管理体制について
サプリメント摂取によるアンチドーピング規則違反からアスリートを守る唯一の方法、それは、全製品の、全ロットを、市場に流通させる前に検査を実施することです。
市場に流通させながら全ロット検査を実施しているメーカーはいくつかありますが、アスリートのドーピング陽性リスクを極力排除するためには、全ロット検査でも十分ではないと考えています。
そのため、PPNでは全製品・全ロットに対して、市場に流通させる前に検査を実施するだけでなく、「結果を確認するまで出荷しない」という管理体制を取っています。
この体制を取っているメーカーは世界で唯一弊社しかありません。アスリートにとって栄養摂取は投資であり、ドーピング検査の徹底は保険です。PPNでは「体感」と「安全性」を実現できる製品開発に尽力しています。