PDCAASとDIAAS──同じタンパク質でも評価が逆転する、2つの指標の違い

プロテイン選びの場面で、「ホエイは吸収がいい」「大豆はアミノ酸スコアが低い」といった話を見かけたことがあるかもしれません。こうした評価の裏側には、タンパク質の「質」を数値化するための指標があります。長らく使われてきたPDCAAS(タンパク質消化性補正アミノ酸スコア)と、近年FAO:国連食糧農業機関が採用を進めているDIAAS(消化性必須アミノ酸スコア)です。

この2つは似た名前を持ちながら、計算の前提が異なるため、同じ食品でも評価が食い違うことがあります。この記事では、両者の違いがどこから生まれるのか、そして実際の測定でどの程度の差が出るのかを、研究データをもとに整理します。

著者プロフィール
著者紹介:阿久津貴史(公式HP)
株式会社ピークパフォーマンスニュートリション(PPN)代表取締役
パワーリフティングジム TXP代表(公式HP)
NPO法人東京都パワーリフティング協会 副理事長(公式HP)

健康科学修士 / NSCA-CPT(2001年〜)/ NSCAストレングス&コンディショニングスペシャリスト(2004年〜)/ 公認スポーツメンタルコーチ(2020年〜)

2012〜2023年パワーリフティング全日本選手権12連覇。2023年11月の世界選手権を最後に引退。現在はプライベートで東京都立大学大学院人間健康科学研究科「知覚運動制御研究室」にて、樋口貴広教授の元で研究生活を送っている。

結論──「動物性が有利、植物性が不利」と単純化する前に知っておきたいこと

この記事の要点

  • PDCAASは便(糞便)から測ったタンパク質全体の消化率を使い、スコアは100で切り捨てられる。1991年にFAO/WHOが採用して以来、30年以上にわたり国際的な標準として使われてきました。
  • DIAASは小腸末端(回腸)でアミノ酸ごとに消化率を測り、切り捨ても行わない。2013年にFAOが提案した、より新しい評価法です。
  • 実際に同じタンパク質で両者を比較した研究では、乳タンパク質はDIAASの方が高く出て、大豆・エンドウ・小麦などはPDCAASの方が高く出るという、繰り返し報告されているパターンがあります。つまりPDCAASは、消化率の低いタンパク質の質を過大評価している可能性が指摘されています。
  • ただし、DIAASにも独自の限界があり、規制上の食品表示は現時点でも多くの国でPDCAASが使われ続けています。「DIAASの数値さえ見れば十分」と言い切れる段階ではなさそうです。

ここから、それぞれの根拠を見ていきます。

そもそも、なぜタンパク質の「質」を測る指標が必要なのか

タンパク質の量を確保していても、体が必要とするアミノ酸のバランスや、それがどれだけ吸収されるかによって、実際に体で使える量は変わってきます。人が体内で作れない9種類の必須アミノ酸のうち、食品中の含有量が基準パターンに対して最も少ないもの(制限アミノ酸)が、そのタンパク質全体の評価を左右するという考え方が、アミノ酸スコアの基本にあります。

ただし、含有量だけを見ても、それがどれだけ消化・吸収されるかまでは分かりません。そこで1991年、FAO/WHOの専門家会議は、アミノ酸スコアに消化率を掛け合わせて評価するPDCAASという方法を提唱しました(Schaafsma, 2000)。この方法は30年以上にわたって、食品のタンパク質含有量表示などで国際的に広く使われてきました。

PDCAASには、どのような限界が指摘されてきたのか

PDCAASの計算では、便に排出された窒素量から求めた「タンパク質全体の消化率」を、すべてのアミノ酸に一律で当てはめます。しかし、この前提そのものに無理があるという指摘が、導入から20年が経過した頃から相次ぐようになりました(Boye et al., 2012)。

「便での消化率」と「小腸末端(回腸)での消化率」の違い

タンパク質やアミノ酸は、基本的に小腸で吸収されます。しかし便に含まれる窒素量を基準にすると、小腸で吸収されずに大腸まで届いたアミノ酸が、腸内細菌によって代謝された分まで「消化された」ように見えてしまうことがあります。そのため便ベースの消化率は、実際の吸収量を過大に見積もる方向にずれやすいとされています。

加えてPDCAASには、スコアが100(1.0)を超えた分を切り捨てるというルールがあります。これは「必要量を超えて摂取しても追加の利益はない」という考え方に基づいていますが、実際の食事は複数の食品を組み合わせて摂ることが多く、あるタンパク質が持つ「他の食品のアミノ酸不足を補う」という役割を、この切り捨てによって評価できなくなるという問題が指摘されてきました(Boye et al., 2012)。

DIAASは、この2つの問題をどう扱っているのか

こうした課題を受けて、FAOは2013年の専門家会議で新しい評価法としてDIAASを提案しました。最大の違いは、消化率を便ではなく小腸末端(回腸)で、しかもアミノ酸ごとに個別に測定する点です。豚を用いた動物モデルが、ヒトの回腸消化率を推定する上で妥当性のあるモデルとして採用されています。もう一つの違いが、スコアの切り捨てを行わない点です。これにより、あるタンパク質が持つ「複数の食品を組み合わせたときの補完的な価値」を評価に反映できるようになっています。

実際に測定すると、評価はどう変わるのか

理論上の違いは分かっても、実際の食品でどの程度の差が生まれるのかは、また別の問題です。この点を直接検証した研究の一つが、豚を使ってホエイ・乳タンパク質と、エンドウ・大豆・小麦といった植物性タンパク質のPDCAASとDIAASを同時に測定した実験です(Mathai et al., 2017)。

結果は、はっきりとしたパターンを示していました。ホエイ濃縮物・乳タンパク質濃縮物・脱脂粉乳では、切り捨てを適用した従来のPDCAASの方がDIAASより低く出た一方、エンドウ濃縮物・大豆分離物・大豆粉・小麦では逆にPDCAASの方がDIAASより高く出ていました。つまりPDCAASは、消化率の高いタンパク質を過小評価し、消化率の低いタンパク質を過大評価する傾向があるという、この研究以前から指摘されていた懸念(Rutherfurd et al., 2015)を、実測データとして裏付ける内容でした。

タンパク質源 PDCAAS(切り捨てあり) DIAAS どちらが高いか
ホエイ濃縮物(WPC) 100 107 DIAASが高い
乳タンパク質濃縮物(MPC) 100 120 DIAASが高い
脱脂粉乳(SMP) 100 105 DIAASが高い
エンドウ濃縮物(PPC) 75 62 PDCAASが高い
大豆分離物(SPI) 93 84 PDCAASが高い
大豆粉 98 89 PDCAASが高い
小麦(全粒) 50 45 PDCAASが高い

出典: Mathai, Liu & Stein(2017)、成長期の豚を用いた実測値。PDCAASは2〜5歳児の基準パターン(切り捨てあり)、DIAASはFAO(2013)の6ヶ月〜3歳児の基準パターンで算出されており、両者は同一の年齢区分を使っていません。評点パターンや年齢区分を変えると数値は変動します。

加熱・加工によっても、両者の評価は違う方向に動く

もう一つ興味深い例が、生とロースト、それぞれのピスタチオを比較した研究です(Bailey et al., 2020)。この研究では、ロースト加工によってPDCAASは73から81へと上昇した一方、DIAASは86から83へと低下していました。同じ食品を同じ条件で処理しているにもかかわらず、指標によって「品質が上がった」のか「下がった」のかという結論そのものが逆になっています。

ロースト加工のような加熱処理は、タンパク質を変性させてアミノ酸ごとの消化・吸収効率を下げる方向に働くことが知られています。DIAASがロースト後に低下したのは、この変化を回腸での個別アミノ酸消化率が捉えているためだと考えられます。一方でPDCAASが逆に上昇したのは、便ベースの消化率(総タンパク質としての消化率)が、こうしたアミノ酸ごとの細かい変化を打ち消してしまった可能性を示唆しています。

食事パターン全体で見ても、差は残る
個別の食品だけでなく、食事パターン全体で比較した場合にも、両指標の差は縮まりません。2011年のFAO専門家会議以降の進展を振り返ったレビューでは、相対的に質の低い食事パターンにおいて、PDCAASでは88%と評価される一方、DIAASでは76%にとどまるという、10ポイント以上の差が報告されています。より質の高い食事パターンを組み合わせた場合でも、DIAASは100%を下回ったままで、PDCAASとの間に実質的な差が残っていたとされています(Moughan & Lim, 2024)。

では、DIAASを見ておけば十分なのか

ここまでの内容だけを見ると、「DIAASの方が正確なのだから、これからはDIAASだけを基準にすればいい」と考えたくなるかもしれません。しかし、この結論には注意が必要です。植物性食品を中心にDIAASの限界を整理したレビューでは、少なくとも5つの課題が指摘されています(Craddock et al., 2021)。

植物性と動物性の食品で異なる窒素・タンパク質換算係数の差が反映されていないこと、日常的によく食べられる植物性食品のデータが限られていること、加熱・加工によって植物性タンパク質の消化率が向上する効果が十分に考慮されていないこと、成長の早い豚という動物モデルを基準にしていること、そして個々の食品を単体で評価しており、実際の食事に含まれる他の栄養素との相互作用(食品マトリックス)を考慮していないことです。同レビューは、特にDIAASが運動時のタンパク質摂取といった、本来の想定を超えた文脈で使われ始めている点にも懸念を示しています。

規制や表示の現場では、まだPDCAASが主流

科学的な妥当性の議論とは別に、実際の食品表示でどちらが使われているかという現状もあります。DIAASが規制上採用された場合の影響を検討したレビューによれば、米国の規制枠組みは依然としてPDCAASを、カナダはさらに古いPER(タンパク質効率比)という指標を基盤としており、DIAASが正式な規制枠組みに組み込まれた例はまだ限られています(Marinangeli & House, 2017)。同レビューでは、治療用食品の品質評価などの一部の文脈でDIAASの活用が言及され始めている段階だとも述べられています。

正確に理解するために:「新しい指標=すでに主流」ではない
DIAASは科学的には優位性が指摘されている一方、実際の規制・表示の現場での採用はまだ限定的です。市販のプロテイン製品のパッケージに書かれた数値が、PDCAASなのかDIAASなのか、あるいはどちらでもない単純なアミノ酸スコアなのかは、商品によって異なります。

まとめ

  • PDCAASは便ベースの消化率とスコアの切り捨てを特徴とする、1991年に採用された指標です(Schaafsma, 2000)。
  • PDCAASには、便ベースの消化率が実際の吸収量を過大評価しやすいことや、切り捨てによってタンパク質の相補的な価値を評価できないことなど、複数の限界が指摘されてきました(Boye et al., 2012)。
  • 2013年にFAOが提案したDIAASは、回腸でのアミノ酸ごとの消化率を使い、切り捨ても行いません。
  • 実際に測定すると、乳タンパク質はDIAASの方が高く、植物性タンパク質の多くはPDCAASの方が高いという、繰り返し報告されるパターンがあります(Mathai et al., 2017;Rutherfurd et al., 2015)。
  • 加熱処理のように、消化率そのものが変化する場面では、両指標が逆方向に動くこともあります(Bailey et al., 2020)。
  • DIAASにも、植物性食品のデータ不足や食品マトリックスの軽視など、独自の限界があります(Craddock et al., 2021)。
  • 規制上の食品表示では、依然としてPDCAASが主流であり、DIAASへの移行は部分的です(Marinangeli & House, 2017)。


実践的に受け取るなら、「動物性タンパク質は質が高く、植物性タンパク質は質が低い」という単純な図式を、そのまま鵜呑みにしないことが一つの落としどころになりそうです。指標が変われば順位も変わりうるという事実自体が、タンパク質の質を一つの数値だけで断定することの難しさを示しています。ラベルに書かれた数値がPDCAASなのかDIAASなのかを意識しつつ、植物性タンパク質を中心とした食事であれば、複数のタンパク質源を組み合わせてアミノ酸の偏りを補い合う、という食べ方の工夫の方が、指標選びそのものよりも実践的な意味を持つのかもしれません。

参考文献

1. Schaafsma, G. (2000). The protein digestibility-corrected amino acid score. The Journal of Nutrition, 130(7), 1865S–1867S. https://doi.org/10.1093/jn/130.7.1865s

2. Boye, J., Wijesinha-Bettoni, R., & Burlingame, B. (2012). Protein quality evaluation twenty years after the introduction of the protein digestibility corrected amino acid score method. British Journal of Nutrition, 108(S2), S183–S211. https://doi.org/10.1017/S0007114512002309

3. Mathai, J. K., Liu, Y., & Stein, H. H. (2017). Values for digestible indispensable amino acid scores (DIAAS) for some dairy and plant proteins may better describe protein quality than values calculated using the concept for protein digestibility-corrected amino acid scores (PDCAAS). British Journal of Nutrition, 117(4), 490–499. https://doi.org/10.1017/s0007114517000125

4. Rutherfurd, S. M., Fanning, A. C., Miller, B. J., & Moughan, P. J. (2015). Protein digestibility-corrected amino acid scores and digestible indispensable amino acid scores differentially describe protein quality in growing male rats. The Journal of Nutrition, 145(2), 372–379. https://doi.org/10.3945/jn.114.195438

5. Bailey, H., Carughi, A., & Stein, H. (2020). Digestible Indispensable Amino Acid Score (DIAAS) better Estimates the Protein Value of Pistachios than Digestibility Corrected Amino Acid Score (PDCAAS). Proceedings of the Nutrition Society, 79. https://doi.org/10.1017/s0029665120005224

6. Moughan, P. J., & Lim, W. X. J. (2024). Digestible indispensable amino acid score (DIAAS): 10 years on. Frontiers in Nutrition, 11. https://doi.org/10.3389/fnut.2024.1389719

7. Craddock, J. C., Genoni, A., Strutt, E. F., & Goldman, D. M. (2021). Limitations with the Digestible Indispensable Amino Acid Score (DIAAS) with Special Attention to Plant-Based Diets: a Review. Current Nutrition Reports, 10, 93–98. https://doi.org/10.1007/s13668-020-00348-8

8. Marinangeli, C. P. F., & House, J. D. (2017). Potential impact of the digestible indispensable amino acid score as a measure of protein quality on dietary regulations and health. Nutrition Reviews, 75(8), 658–667. https://doi.org/10.1093/nutrit/nux025

注意事項
本記事は科学的研究に基づく情報提供を目的としており、特定の食品やタンパク質源の優劣を保証するものではありません。医療行為・診断・治療を目的としたものでもありません。特定の疾患をお持ちの方、食事内容に不安のある方は、開始前に医師や管理栄養士にご相談ください。

この投稿をシェアする