クレアチンと脳|現在わかっていること

クレアチンと脳|現在わかっていること

「クレアチン=筋肉のサプリ」多くの方がそういうイメージを持っていると思います。

実際,クレアチンのフィジカルパフォーマンス向上効果は非常に強固なエビデンスがあり,これはスポーツ栄養学の中でも“確立された領域”です。

 

さらに,近年においては研究者たちはもう一つの可能性に注目し始めています。

それが,「クレアチンは脳のエネルギー代謝にも関与しているのではないか?」
という視点です。

 

脳は体重の約2%しか占めないにもかかわらず,全身エネルギーの約20%を消費する“超高代謝器官”です。

そして脳も筋肉と同じように,ATP(エネルギー)によって動いています。

 

近年の研究では,クレアチン補充によって脳内クレアチン濃度が増加すること,そして睡眠不足や低酸素など「脳エネルギーが厳しくなる状況」で認知パフォーマンス低下を抑える可能性が報告されています。

 

脳エネルギー研究へ

2024年にScientific Reports(Gordji-Nejad et al. 2024)に掲載された研究では,21時間の睡眠不足状態において,高用量クレアチン単回投与が脳エネルギー代謝指標に変化を与え,認知パフォーマンスや処理速度を改善したことが報告されました。

研究者たちは,
「クレアチンは疲労関連の認知機能低下を部分的に逆転させる可能性がある」
と述べています。

また,Journal of Neuroscience(Turner et al. 2015)に掲載された低酸素研究では,7日間のクレアチン補充によって脳内クレアチンが平均9.2%増加し,重度低酸素下で生じる注意力低下が抑制されました。

 

一方で,抑えておきたい点としては,「健康な若年者では,認知機能改善効果は一貫していない」というところです。

複数の厳密な研究では,
・睡眠不足ではない
・十分に休息している
・健康な若年成人
では,有意な認知機能改善が認められないケースも報告されています。

 

つまり現在の研究を総合すると,クレアチンは「脳パフォーマンスをベースから底上げするサプリ」というよりも,「脳のエネルギー需給が逼迫した際に,機能低下を抑える可能性がある。」というのが現在の立ち位置なのかもしれません。

 

ではハイパフォーマーを目指すヒトにおいて脳パフォーマンスの期待がないか?というとやはり十分に期待がもてます。

・高強度トレーニング
・高い精神的集中
・試合ストレス
・減量
・長時間移動
・睡眠不足

など,「脳エネルギー需要」が高い環境で生活している場合には,クレアチンによる“脳エネルギー代謝サポート”の影響を,より大きく受ける可能性は十分考えられます。

 

以前に,ラグビーの日本代表選手がテレビ番組で「代表の合宿があまりにきつすぎて,さらに疲れで寝れなくて辛かった。」というようなことを泣きながらおっしゃっていた記憶がありますが(正確な表現ではありませんがご容赦ください),アスリートはまさにこうした環境下に晒されますのでクレアチンの脳パフォーマンスの働きを十分に期待できると考えられます。

 

神経伝達物質候補に

さらに近年では,クレアチンが単なるエネルギー物質ではなく,“神経伝達物質候補”として研究され始めていることも非常に興味深いポイントです。

 

2023年にeLife誌に掲載された研究(Bian et al. 2023)では,
・シナプス小胞内への存在
・刺激依存性放出
・神経細胞への作用

などが報告され,
「クレアチンが新たな中枢神経伝達物質である可能性」
まで議論され始めています。

 

もちろん,現時点ではまだ仮説段階です。

しかしクレアチン研究は今,
「筋肉のサプリ」から,
「脳エネルギー代謝」
「神経保護」
「認知機能」

へと研究領域を広げ始めています。

 

今回の本ブログでは,こうした最新研究をもとに,
・なぜ脳でもクレアチンが重要なのか
・どんな条件で効果が出やすいのか
・現在どこまで分かっているのか
・どこがまだ未解明なのか

を,できるだけ科学的に整理しました。

ご興味ある方はぜひブログ本編をご覧ください。
クレアチン研究の進化は、まだ止まりそうにありません。


本ブログはこちら


参考文献

Bian X, Zhu J, Jia X, et al. (2023) Suggestion of creatine as a new neurotransmitter by approaches ranging from chemical analysis and biochemistry to electrophysiology. eLife 12:RP89317 doi: 10.7554/eLife.89317

Gordji-Nejad A, Matusch A, Kleedörfer S, et al. (2024) Single dose creatine improves cognitive performance and induces changes in cerebral high energy phosphates during sleep deprivation. Scientific Reports 14:4937 doi: 10.1038/s41598-024-54249-9

Turner CE, Byblow WD, Gant N (2015) Creatine supplementation enhances corticomotor excitability and cognitive performance during oxygen deprivation. J Neurosci 35:1773-1780 doi: 10.1523/jneurosci.3113-14.2015

 

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