パワーリフター 佐竹優典選手インタビュー

パワーリフター 佐竹優典選手インタビュー

スポーツ・芸術・文化など、さまざまな分野の第一線で活躍する方々に焦点を当てて「魂の叫び」をインタビューする「TOP RUNNER INTERVIEW SERIES」。今回は2025年に日本人初となるワールドゲームズ2連覇と世界選手権優勝を果たしたパワーリフターの佐竹優典選手にご登場頂きました!お楽しみください!
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インタビュイー

佐竹優典

全日本パワーリフティング選手権大会(エクイップ部門)9回優勝(クラシック部門)2回優勝。2025年 世界パワーリフティング選手権大会 優勝 *世界パワーリフティング選手権大会優勝は日本人男子4人目の快挙

経歴

埼玉県生まれ
2014年 世界サブジュニアパワーリフティング選手権大会 優勝
2018年 世界ジュニアパワーリフティング選手権大会 優勝
2022年 ワールドゲームズ 優勝
2025年 ワールドゲームズ 優勝
2025年 世界選手権 初優勝

記録

エクイップ66kg級 スクワット日本記録 315kg
エクイップ66kg級 トータル日本記録 805kg

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インタビュアー

阿久津 貴史

PPN代表,元パワーリフティング選手。2012年に日本記録を樹立し初優勝して以来,12連覇を達成。2023年の世界大会を最後に現役を引退。

また初優勝の年に,日本人のメンタル・フィジカル・スキルの3要素を極限のレベルに高めるという想いを形にすべく、東京都練馬区豊玉北にパワーリフティングジム「Team X-treme Power!!!」(TXP)を設立し、選手が成長しやすい環境作りにも尽力している。現在TXPは国内の主要4大大会で団体優勝を22回達成(2025年時点)

パワーリフティング競技の普及のため,2020年から日本パワーリフティング協会アスリート委員の委員長,NPO法人東京都パワーリフティング協会の副理事長にも就任し組織運営と大会運営に精力的に携わっている。

2024年からは「人間の持つあらゆる能力をいかに高めるか?」という個人的な探究のため,プライベートで東京都立大学大学院知覚運動制御研究室で研究生活をスタート。NSCA-CSCS・NSCA-CPT(20年以上保持者)/認定スポーツメンタルコーチ

阿久津:佐竹選手,このたびは2回目のインタビューへのご協力を有難うございます。

2021年にもインタビューをさせていただきました。当時はまだワールドゲームズと世界選手権のどちらも優勝をしていない状態でした。そこから22年にワールドゲームズ初優勝,25年に日本人初となる2連覇,そしてついに念願の世界選手権優勝。本当におめでとうございます。

前回のインタビューで語っていた目標を全て制覇されました。その点もとても印象的です。

今回のインタビューでは21年のワールドゲームズ優勝以降にどういう気持ちで取り組んできたのか,どう生活をしてきたのか(練習含め),そしてワールドゲームズと世界選手権優勝というどちらの目標も達成した今,次に何を目指して日々取り組んでいるのか?そういったことを中心にインタビューをさせてください。

まず22年のワールドゲームズ優勝から25年までの期間を振り返ってどんな期間でしたか?どんなことを考えて取り組んでいたのでしょうか?

長く世界で勝ち続けられるチャンピオン

佐竹選手:ありがとうございます。ワールドゲームズを優勝した際もPPNのメルマガでご紹介頂きましたが、この3年間は自分の中で大きく取り組みを変えた期間でした。

特に大きく変えたのは

・コンディショニング面の改善
・コーチングによる疲労管理 の2点です。

コンディショニングに関しては、前回のワールドゲームズまでは基本的なストレッチやフォームローラー、マッサージガンで身体をほぐすようなケアをしていましたが、それ以外に呼吸エクササイズなどを取り入れたり、ピラティスやLMSといった運動療法を提供するパーソナルジムに通ったりといったことをしてきました。

過緊張状態だと適切に動作を行うことが出来ないので怪我のリスクも高まりますが、ここ数年は大きな怪我もなくトレーニングできておりその効果を実感しています。

またトレーニングメニューについては2024年の頭から山川太希選手(写真左)のコーチングを受けてメニューを組んでもらっています。
これによって自分だけでは取り入れてこなかった考え方や種目も取り入れることができ、疲労を溜めすぎることなく効率的に記録を伸ばすことができたと思います。特にノーギアとフルギアのバランスを見ながらコミュニケーションを取りつつ上手く調整してくれているので、非常に助かっています。

元より自分は短期間でパワーリフティングを引退するというビジョンはなく、学生時代に全日本を優勝したあたりの時期から「長く世界で勝ち続けられるチャンピオン」を目指してきました。

そのため今後10年スパンでの競技人生を考えた時に今の取り組みを継続していたら身体のコンディション的に長くは続けられないと思ったのと、より高い目標、記録のためには今までと違う取り組みをする必要があると思いました。

これらのように今までとやり方を変えることが出来たのも、人生最大の目標であるワールドゲームズ優勝を先に達成することが出来たことが大きかったと思います。

もう目標は達成したから、今までと違うことを躊躇なく試せるようになったという感じです。

余生を楽しく過ごすというイメージに近いかもしれません。笑

また、これまで世界選手権はエクイップ部門のみに出場していましたが、1回目のワールドゲームズ優勝を機にクラシック部門の世界選手権にも出場するようになりました。 もともとクラシック部門も試合には出ていたのですが、両立が難しいために世界選手権はエクイップ部門に絞っていました。 しかしパワーリフティングを最大限に楽しむためには両方出た方がいいだろうと思い、近年は両方の世界選手権に出場しています。 爆発的に記録が伸び続けているクラシックパワーリフティングの世界に身を置くことは自身の中でもいい刺激となっており、双方に良い影響があると感じています。

阿久津:いろいろな新しい取り組みを加えて進化されてきたのですね。今後さらに進化するために試してみようと思っていることがあれば語れる範囲で教えてもらえますか?

佐竹選手:これから何かを新しく始めるとうことはあまり無いかもしれません。笑
どちらかというと、今の取り組みの質をさらに上げていく方にフォーカスしてやっていきたいと思っています。

特にコンディショニングの面についてはまだまだ底上げできる余地が残っていると感じています。メニューについては、JCPが終わってからここ数年週4回の練習だったのを週5回に増やしてみました。ここはこのまま同じことをしていても伸びないと思って試して見てというところですが、今後どうなるかは反応を見ながらやっていきたいと思っています。

阿久津:底上げできる余地を感じられているということで進化したパフォーマンスを楽しみにしています。

次に仕事と競技の両立について聞かせてください。

パワーリフティングのトップ選手の多くはアマチュア競技ゆえにパワーリフティングやトレーニング関係の仕事を生業として練習しやすい環境を作っている印象があります。佐竹選手は大学卒業後は大手一般企業に就職されました。仕事と競技の両立という面で苦労された点などがあれば教えてください。またそのようなことを感じたご経験があった場合,どのように工夫をしてこられたのかも教えていただけますか?

日付が変わってからジムにいくことも

佐竹選手:結論、選択と集中。そして気合いです。笑

仕事と競技の両立はもちろん大変ですが、忙しいことは練習を休む理由にはなりません。社会人になりたてのころは学生時代との練習時間と量のギャップに悩まされましたが、今ではいいバランスを保てていると思います。

平日の練習時間は今は1時間半ほどで、仕事前の朝か仕事終わりの夜に近所の24時間ジムで行っています。日付が変わってからジムに行くようなことも珍しくはありません。

その代わり週末はTXPで半日かけてがっつり3種目の練習を行っています。
トータルの練習時間は学生時代よりかなり少なくなりましたが、今の自分に必要なことを選択し、限られた時間の中で集中して取り組むことで学生時代よりも強くなることができています。

仕事と競技のどちらも両立して頑張ることで周囲からの理解と協力も得られます。結果として仕事にも良い影響が出ることが多いと考えています。

阿久津:日付が変わってからでも欠かさず練習。さすがですね。そういった環境(一定の時間だけに練習しない)も海外試合に生きているかもしれませんね(佐竹選手は軽量級のため国際大会出場の際に時差を整える時間が少ないケースが多い)。

そして相変わらず週末はがっつりやってますね。笑
佐竹選手は仕事以外の全ての時間をパワーリフティングに捧げている印象です。

改めまして世界選手権初優勝本当におめでとうございます。昨年の8月のワールドゲームズ連覇から11月の世界選手権初優勝までどのような気持ちで取り組んでこられましたか?調整期間も少なかったかと思います。ワールドゲームズの戦いから学んだこと,世界選手権までに改善したことなどあれば合わせて教えていただけますか?

佐竹選手:世界選手権を優勝する前にワールドゲームズを連覇する選手は中々いないと思います。笑

毎年あと一歩のところで逃し続けていたので、さすがにそろそろ勝たねば、という気持ちでした。

元々ノーギアの調子がいい方がフルギアにも好影響があるタイプでしたので、ノーギアの調子を保ったままギアの調整をしようとしましたが、ワールドゲームズ前の調整ではノーギアで重さを持ち過ぎて回復が追いつかず、かなり疲労を溜め込んでしまっていました。

世界選手権に向けてはその辺りの重量設定で無理をしないように出来たことはピーキングを通しての好調に繋がったかと思います。

阿久津:ワールドゲームズでの調整の学びをしっかり活かせたからこその世界選手権での優勝だったのですね。反省をすぐに活かすという点ではある意味,少し短めのスパンで大きな大会が続いたのもよかったのかもしれませんね。

世界選手権での優勝が決まった瞬間やそれ以降,どのようなお気持ちでしたか?一般男子では日本人として4人目の快挙でした。またスクワットとトータルも日本記録を更新されました。表彰台で涙を流されていたのも印象的でした。

夢を叶えることができた。

佐竹選手:ありがとうございます。世界選手権で優勝した瞬間は実は泣かなかったのです。ワールドゲームズは2回とも号泣でしたが、世界選手権は安堵の方が強かったので…笑

ただ、君が代が流れた瞬間(というか名前を呼ばれる前辺りから)は感極まってめちゃくちゃ泣いてしまいました。

ワールドゲームズとはまた違ったパワーリフティング世界最高峰の舞台、競技を始めた頃からの夢を叶えることができたということと、偉大な先輩方の歩んできた道のスタートラインにようやく立つことができたという気持ちでした。

記録については今回は特にこだわりは無く、勝つために必要な重量をやっていたら勝手に日本記録も取れていたという感じでした。

世界選手権では記録よりも勝つことが重要なので、数字は後からついてくればいいと思っていますが、最終的にトータルの世界記録は更新したいです。

阿久津:最終的にはトータルの世界記録更新ということですが,次の目標はどうですか?

ワールドゲームズ,世界選手権を制覇した今,何が佐竹選手の原動力となっているのですか?

パワーリフティングが大好き

佐竹選手:原動力はいつどんな時でもパワーリフティングが大好きだという気持ちです。これまでパワーリフティングを辛い、辞めたいと思ったことが一度もありません。 どんな負け方をしても、怪我をした時でも結局はパワーリフティングが楽しくて好きだからまた頑張ろうという気持ちになれます。

未だに毎週末TXPに行くのが楽しみで仕方ないくらいです笑

練習ももちろん楽しいですが、同じ志を持った仲間と過ごせるTXPでの時間は自分にとってかけがえのない時間になっています。

こうやって楽しみながら続けていれば、いつかとんでもないところまで到達できると信じています。

具体的に思い描いている次の目標としては
・ワールドゲームズ3連覇
・世界選手権の連覇
・クラシックの世界選手権優勝
・SBDシェフィールドの出場
です。

誰も成し遂げたことないことを達成したいという気持ちがあるので、エクイップクラシックの両方を極め、世界で一番パワーリフティングを楽しみ尽くしたいと思います。

阿久津:目標を聞かせていただき有難うございます。やはり「大好き」という気持ちが根底にある選手は強いですね。私も選手が強くなって目標を達成していく姿を見るのが大好きなのでTXPの環境作りに裏方として尽力します。佐竹選手の言葉にプレッシャーを感じつつ。笑

佐竹選手は現役選手でありながらNPO法人東京都パワーリフティング協会の運営委員をされ,審判員としても大会に携わっています。現役選手としてこういった活動に参加されているのが印象的です。どういったお考えでされているのでしょうか?

パワーリフティングの発展にも寄与していきたい。

佐竹選手:やはり大会は選手だけでは成立しません。それを支える裏方の皆様がいるからこそ大会を開催することができます。そういった思いから、学生時代から補助員や審判の活動も行ってきました。

特に東京都は選手数も日本で一番多く、今後のパワーリフティング界の発展のためにはそれを支える人員が必要不可欠です。 これまでお世話になってきたことを業界全体に還元するためにも、選手としてだけではなく協会側の立場としてもパワーリフティングの発展に寄与していきたいと思います。

阿久津:若い頃から素晴らしい考えをお持ちですね。実際に佐竹選手に憧れてパワーリフティングを初めた選手,続けている選手もたくさんいらっしゃると思います。最後に、ファンの皆様へメッセージをお願いします。

ファンの皆さまへ

佐竹選手:いつも応援ありがとうございます。 皆様のご声援が苦しい時、心の支えになっています。 これからも感謝の気持ちを胸に、この人生を懸けてパワーリフティングという道を極めていきたいと思います。 今後ともどうぞ応援のほどよろしくお願いいたします!


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