β-alanine(ベータアラニン)の特徴や摂取・効果について

β-アラニンは、3‐アミノプロパノン酸とも呼ばれる非必須アミノ酸の一種です。

非必須アミノ酸とは、体内で自然に生成されるアミノ酸のことで、β-アラニンは肉類、鶏肉、魚類にも含まれており、体内でヒスチジンと合成されて「カルノシン」を生成します。

スポーツサプリメントをはじめ、サルコペニア(加齢にともなって筋肉の量が減少していく現象)対策としての中高年層向け機能性食品など、広い範囲で採用されている成分です。

しかしながら、プロテインやその他のアミノ酸と比べると、β-アラニンの役割や特徴についてはあまり認知されていないように思われます。

例えば、過去の研究によると、β-アラニンサプリメントを摂取しているオーストラリアのプロラグビー選手やフットボール選手の大多数は、その利点についてほとんど知識がなく、ガイドラインを満たすのに十分な頻度または十分な量を摂取している回答者は20%未満という結果が出ています。 

β-アラニンはエルゴジェニックエイドとして過去の研究データも多く、正しく摂取すればアスリートは大きな恩恵を得ることが期待できますので、その特徴や効果はしっかりと知っておきたいところです。

そこで今回は、β-アラニンについて詳しく解説しようと思います。

阿久津貴史

著者紹介

パワーリフティング全日本選手権12連覇・現日本記録保持
NSCA-CSCS・NSCA-CPT/認定スポーツメンタルコーチ

阿久津貴史公式HP

1982年生まれ。パワーリフティングの競技者として活動するとともに、パワーリフティング専門ジム「TXP」を運営。後進育成・コーチングも精力的に行っており、全日本優勝者を多数輩出。アスリートのパフォーマンス向上を目的とした、理想的なエルゴジェニックエイドの開発にも日々尽力している。

β-アラニンとカルノシン

β-アラニンが筋肉組織を作る役割を果たすと誤解している人もいるかもしれませんが、β-アラニンはそれ自体が体内で筋肉組織を作るためには使用されません。

実際は、脳や筋肉中に多く存在するペプチドの一種、「カルノシン」を構成する材料として機能します。

人をはじめとする脊椎動物は、ヒスチジンとβーアラニンを結合させるカルノシン合成酵素遺伝子を持ち、体内でカルノシンを恒常的に生成しています。 カルノシンは、動物の体の中でも、激しい運動をすることが多い場所に、多く存在しています。

特に、運動能力が高い動物はカルノシンを多く生成しており、魚類から鳥類まで、幅広い種類の動物に必要な栄養素です。 例えば、カルノシンは野鳥の体内にも存在し、カルノシンの働きによって長時間の飛行が可能になっていることが知られています。

筋疲労とカルノシン

では、ここからカルノシンの効果について説明していきます。

私たちが日常的に行っている運動動作は、骨格筋の収縮によって成り立っています。そして、筋の収縮を継続的に実施した時のパフォーマンスの低下が、お馴染みの「筋疲労」です。

スポーツをやっている方なら、「筋疲労が起こると筋肉に乳酸が溜まる」という話を聞いたことがある人も多いかと思います。 最近の研究では、もう少し詳しい機序が明らかになってきており、筋疲労の原因として、乳酸が作られる過程で発生する水素イオン(プロトン)などの作用で、筋肉のpHバランスが酸性に傾くことが筋疲労の一因と考えられています。

カルノシンは、上記のプロトンによる酸化を中和する働きを持っているので、活動筋内のプロトン蓄積に対して、即時防御物質として機能します*1。

端的に言うと、カルノシンによって、筋疲労が抑止されるということです。

β-アラニンを摂取すると、カルノシンが増加する

カルノシンの構成要素であるβ-アラニンを継続的に摂取すると、骨格筋カルノシン含量が増えることが分かっています。

つまり、β-アラニンの摂取によって筋内のカルノシンを増加させると、筋疲労を抑止させることが期待できるわけです。

特に、無酸素運動中における筋肉疲労への耐性が向上するとされています。具体的には、60〜300秒にわたる高強度の活動中において、β-アラニンの摂取がより効果的となります*2*3。 

一方で、低強度活動における具体的な効果に関する研究はまだ不十分といえます。β-アラニンの摂取期間を長くすると、筋肉内のカルノシン含量が増加することは明らかになっていますが、低強度活動パフォーマンスの関連性はまだ明確になっていません。

β-アラニンの摂取量について

推奨される摂取量は1日あたり3.2グラム〜6です。ベータアラニンの血中濃度は摂取後2時間以内に上昇し、その後下降をします。

「直接カルノシンを摂取すれば良いではないか?」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、カルノシンを経口摂取すると、そのままの状態で胃を通過し、小腸に到達して吸収されます。 その後、カルノシンは小腸の細胞内や血液中で分解され、βアラニンとヒスチジンになります。これらが血流に乗って脳へ運ばれた後に、再びカルノシンとして合成されます。

つまり、摂取したカルノシンはβ-アラニンとヒスチジンに分解されることになるので、β-アラニンの形で摂取したほうが、効率が良いといえます。

β-アラニン摂取による運動能力以外の恩恵

アスリートがβ-アラニンを摂取することによって筋肉疲労が軽減し、競技中のパフォーマンス維持や、より高強度かつ頻繁にトレーニングできるようになることは、多くの研究で示されています。 また、近年では軍隊におけるβ-アラニン摂取の効果も研究が進められており、過酷な状況でも兵士が肉体的・精神的パフォーマンスを維持するためにβ-アラニン摂取が効果があることが明らかになっています。

例えば、こちらの研究では、24 時間の睡眠なしの模擬軍事作戦中の認知機能に対するβ-アラニンの影響が調査されました。参加者は、いくつかの反応テスト、視覚追跡評価、シリアル セブン テストなど、さまざまな認知機能評価を受けました。 その結果、β-アラニンを摂取した参加者は視覚反応時間を維持でき、プラセボ群と比較してミスが大幅に減少したという結果が得られています。

また別の研究では、射撃中の不発を認識したときの修正行動を評価したところ、プラセボ群と比較して優れたパフォーマンス速度を示したという結果があります。さらに、大きな騒音が発生する射撃場内で、連続減算テストを行うことにより、認知機能を評価するという実験も行われています。ここで、β-アラニンを摂取した兵士は、プラセボを摂取した兵士よりも2分間のテストでの正解数が有意に多かったという結果が得られています。

上記のような結果を踏まえ、精神疲労の軽減、または認知的意思決定能力の向上にもβ-アラニンが関連している可能性が示唆されているというわけです。

β-アラニンとドーピング検査について

様々な恩恵が期待されるβ-アラニンですが、アスリートが摂取する場合、ドーピング陽性が気になる人もいるのではないでしょうか?

まず前提として、β-アラニンは体内にも自然に存在する物質であるため、世界反ドーピング機関(WADA)の禁止物質にも含まれていません。

しかしながら、アスリートがβ-アラニンをサプリメントで摂取する場合、商品の選択に注意が必要です。何故なら、成分表に含まれていなくても、製造工程における残留成分などによって本来入るべきでない成分が混入してしまうことは決して珍しいことではないからです。

たとえアンチドーピング認証を受けている商品だったとしても、多くは市販後の抜き取り調査(インフォームドチョイス)を採用しており、禁止物質を含んだ商品を口にしてしまう可能性はゼロではないのです。

そのため、β-アラニンをサプリメントで摂取する場合は、必ず商品の管理体制をチェックしておくことをお勧めします。 


PPNのサプリメント管理体制について
certification

サプリメント摂取によるアンチドーピング規則違反からアスリートを守る唯一の方法、それは、全製品の、全ロットを、市場に流通させる前に検査を実施することです。

市場に流通させながら全ロット検査を実施しているメーカーはいくつかありますが、アスリートのドーピング陽性リスクを極力排除するためには、全ロット検査でも十分ではないと考えています。

そのため、PPNでは全製品・全ロットに対して、市場に流通させる前に検査を実施するだけでなく、「結果を確認するまで出荷しない」という管理体制を取っています。

この体制を取っているメーカーは世界で唯一弊社しかありません。アスリートにとって栄養摂取は投資であり、ドーピング検査の徹底は保険です。PPNでは「体感」と「安全性」を実現できる製品開発に尽力しています。

詳しくはこちら>>

*1:Lancha Junior AH, de Salles Painelli V, Saunders B, Artioli GG. Nutritional strategies to modulate intracellular and extracellular buffering capacity during high-intensity exercise. Sports Med, 45 (1): 71-81, 2015.

*2:Stellingwerff, T.; Decombaz, J.; Harris, R.C.; Boesch, C. Optimizing human in vivo dosing and delivery of β-Alanine supplements for muscle carnosine synthesis. Amino Acids 2012, 43, 57–65.

*3:Perim, P.; Marticorena, F.M.; Ribeiro, F.; Barreto, G.; Gobbi, N.; Kerksick, C.; Dolan, E.; Saunders, B. Can the Skeletal Muscle Carnosine Response to Beta-Alanine Supplementation Be Optimized? Front. Nutr. 2019, 6, 135. 


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