エルゴジェニックエイドを正しく選択するには

「エルゴジェニックエイド(Ergogenic Aids)」という言葉を聞いたことがありますか?これはスポーツやエクササイズのパフォーマンスを向上させるために使用されるサプリメントを指します。

エルゴジェニックエイドは科学的に効果が立証されているものもあれば、そうでないものもあります。

アスリートがエルゴジェニックエイドを利用するのはごく自然な行為ですが、摂取するもの対して自身がしっかりと理解したうえで、エルゴジェニックエイドの利用に対して慎重に判断しなくてはいけません。

阿久津貴史

著者紹介

パワーリフティング全日本選手権12連覇・現日本記録保持
NSCA-CSCS・NSCA-CPT/認定スポーツメンタルコーチ

阿久津貴史公式HP

1982年生まれ。パワーリフティングの競技者として活動するとともに、パワーリフティング専門ジム「TXP」を運営。後進育成・コーチングも精力的に行っており、全日本優勝者を多数輩出。アスリートのパフォーマンス向上を目的とした、理想的なエルゴジェニックエイドの開発にも日々尽力している。

エルゴジェニックエイドとは?

サプリメントとは「補助・追加」という意味ですが、一般的にさまざまな健康食品も含めてサプリメントと呼んでいることが多く、曖昧な意味合いで使われることも多いです。

国立スポーツ科学センター(JISS)は、これらのサプリメントを目的に応じて区別するため、食事で補いきれない栄養素や成分を摂取する目的のサプリメントを「ダイエタリーサプリメント」、運動能力に影響する可能性のあるサプリメントを「エルゴジェニックエイド」として区別しています。

ダイエタリーサプリメント

物質名 商品の例
たんぱく質 プロテイン
炭水化物 エネルギーゼリー、スポーツバー、 スポーツジェル
ビタミン マルチビタミン、ビタミン C
ミネラル マルチミネラル、カルシウム、鉄
炭水化物、ミネラル スポーツドリンク

エルゴジェニックエイド

物質名 商品の例
アミノ酸 BCAA、カルニチン
クレアチン クレアチンパウダー
カフェイン カフェイン錠
ユビキノン コエンザイム Q10
重炭酸ナトリウム
ハーブ ウコン、エゾウコギ

エルゴジェニックエイドの場合、多くはインターネットを通じて販売されています。メーカーのホームページ上で顕著な効果を謳っていたり、SNS上でフォロワーが多い人が推奨していたりするケースも珍しくありません。

しかしながら、実際の研究結果を調べるとまだ十分な検証がされていなかったり、ある研究においては効果が見られたものの、別の研究では効果が見られなかったりするものもあります。

そのため、アスリートがエルゴジェニックエイドを検討する場合、ホームページ上の情報だけを鵜呑みにするのではなく、以下の前提を踏まえて、信頼できる情報源を参考にするようにすべきです。


・個人差や運動内容によっても影響が変わってくるため、どの選手に対しても必ずパフォーマンスアップに効果があるという魔法のようなサプリメントは存在しない

・メーカーはポジショントークを発信している場合がある。広告塔となっている人物が発信するメッセージも同様

・古い情報と新しい情報で結論が全く異なる場合がある

なお、国際オリンピック委員会 (IOC)が過去に出した声明において、スポーツパフォーマンスを直接改善する科学的根拠があるサプリメントとして挙げられているのは、カフェイン、クレアチン(クレアチンモノハイドレート)、硝酸塩、重炭酸ナトリウム、ベータアラニンです。

上記声明はIOCの立場上、かなり保守的な内容となってはいますが、上記以外のエルゴジェニックエイドにおいては研究が不足しており、エリートアスリートへの適用を保証するのに十分な質の研究が無いとしています。

ここから、IOCの声明においても科学的根拠があるとされるエルゴジェニックエイドについて見ていきましょう。

カフェイン

多くのアスリートがコーヒーやエナジードリンクなどでカフェインを摂取しています。カフェインは、脳の中で眠気を感じさせる物質(アデノシン受容体)と結合し、その働きを邪魔します。これにより興奮作用や、疲労を感じにくくする作用が生じます。

また、カフェインは、体が脂肪をエネルギーとして使いやすくする効果もあります。これにより、筋肉の糖分を温存することができます。これらの作用により、幅広い競技において、パフォーマンスを高める可能性があります。

しかし、カフェインの摂取については、以下の点に注意する必要があります。

・カフェインの摂りすぎは、不安や不眠、動悸や高血圧などの副作用を引き起こす可能性があります。また、手が震える場合があるため、射撃やアーチェリーなどの正確さが求められる競技では逆効果になる可能性があります*。さらに、カフェインは疲れを感じさせないことで、怪我やオーバートレーニングの危険性を高める可能性もあります。

・カフェインは他の運動能力を高める物質と一緒に摂取することで、効果が増したり減ったりする可能性があります。例えば、カフェインと糖分を一緒に摂取すると、長時間走るときの運動能力がさらに高まるという報告があります*。一方で、カフェインと後述のクレアチンを一緒に摂取すると、互いに効果を打ち消しあうことが示唆されています*。そのため、他の物質と一緒に摂取する場合は注意が必要です。

クレアチンモノハイドレート

クレアチンモノハイドレートは、筋肉内のエネルギー源であるATPを作るために必要なクレアチンリン酸の原料です。クレアチンモノハイドレートを摂取すると、筋肉内のクレアチンリン酸が増えて、短時間の高強度運動のパフォーマンスや回復が改善されることが多くの研究で示されています*

しかしながら、摂取については、以下の点に注意する必要があります。

・摂りすぎると、腎臓や肝臓に負担がかかったり、水分代謝が乱れたりする可能性があります。体重や筋肉量が増えることもあるので、体重制限があったり、体重増加によってパフォーマンスに大きな影響がある競技では注意が必要です。

・クレアチンモノハイドレートは他のサプリメントと併用することで、効果が変わることもあります。例えば、クレアチンモノハイドレートとβアラニンを一緒に摂ると、高強度運動のパフォーマンスがさらに向上することが報告されています。一方で、クレアチンモノハイドレートとカフェインを一緒に摂ると、効果が打ち消されることもあると言われています。

クレアチンモノハイドレートは特に高強度・短時間の競技に有効ですが、持久力系の競技でも一定の効果が期待できます*

硝酸塩

硝酸塩は、一酸化窒素という血管や筋肉に作用する物質の原料です。硝酸塩は、ビートルートやほうれん草などの野菜に多く含まれています。

・硝酸塩は、筋力やスピードなどの高強度や短時間の運動に効果があります。硝酸塩を摂ると、筋肉がより強く速く動くようになったり、同じ動作を続けられる時間が長くなったりすることが研究で示されています*。これは、一酸化窒素が筋肉の働きを助けるからです。

・硝酸塩は、持久力や有酸素運動にも効果があります。硝酸塩を摂ると、最大酸素摂取量や運動時間が長くなることが研究で示されています。これは、一酸化窒素がエネルギーの消費を抑えたり、筋肉に酸素を送る能力を高めたりするからです。

・硝酸塩の摂りすぎによって、不安や不眠、動悸や高血圧などの症状が出ることがあります。特に、集中力や判断力が必要な競技では、パフォーマンスが下がる可能性もあります。

・硝酸塩は他のサプリメントと一緒に摂ると、効果が変わることもあります。例えば、硝酸塩とβアラニンやクレアチンを一緒に摂ると、高強度運動の効果がさらに上がることが報告されています。硝酸塩とカフェインを一緒に摂ると、効果がなくなることもあると言われています。他のサプリメントと一緒に摂る場合は注意してください。

・硝酸塩は特に高強度や短時間の競技に有効ですが、持久力や有酸素運動でも効果が期待できます。

重炭酸ナトリウム

一般的に重曹と呼ばれる物質で、食品や医薬品としても利用されています。重炭酸ナトリウムは、エルゴジェニックエイドの一種として、高強度や短時間の運動パフォーマンスを向上させる可能性があります。

・重炭酸ナトリウムを摂取すると、血液中の重炭酸イオンが増加し、水素イオン(H+)を中和することで、血液や筋肉内のpHを上昇させます。これにより、高強度運動時に発生する乳酸や水素イオンによる疲労感や筋力低下を抑制することができます。

・また、重炭酸ナトリウムは血管拡張作用も持ち、血流や酸素供給を改善することも期待できます。もちろん、重炭酸ナトリウムにおいても、適正な摂取量やタイミングは、個人差や運動種目によって異なります。

・重炭酸ナトリウムの過剰摂取は、腹痛や嘔吐などの消化器系の副作用を引き起こす可能性があります。また、重炭酸ナトリウムは体内の水分バランスや電解質バランスを乱すこともあります。

・重炭酸ナトリウムは他のエルゴジェニックエイドと併用することで、相乗効果や拮抗効果が生じる可能性があります。例えば、重炭酸ナトリウムとクレアチンやβアラニンを同時摂取すると、高強度運動パフォーマンスがさらに向上するという報告があります。一方で、重炭酸ナトリウムとカフェインや硝酸塩を同時摂取すると、双方の作用メカニズムを打ち消すように働くことが示唆されています。

ベータアラニン

ベータアラニンは、筋肉内のカルノシンという物質の合成に必要な原料です。カルノシンは、高強度の運動時に発生する乳酸や水素イオンによる筋肉疲労を抑制する働きを持っています。つまり、ベータアラニンを摂取することで、筋肉内のカルノシンが増加し、高強度運動の持続時間や回復速度が向上する可能性があります。

注意点としては、以下のとおりです。

・ベータアラニン摂取は、皮膚や口内のピリピリとした感覚や、発赤などの副作用を引き起こす可能性があります。また、ベータアラニンはタウリンと競合することでタウリンの吸収を妨げる可能性もあります。

・ベータアラニンは他のエルゴジェニックエイドと併用することで、相乗効果や拮抗効果が生じる可能性があります。例えば、ベータアラニンとクレアチンや硝酸塩を同時摂取すると、高強度運動パフォーマンスがさらに向上するという報告があります 。一方で、ベータアラニンとカフェインを同時摂取すると、双方の作用メカニズムを打ち消すように働くことが示唆されています。

エルゴジェニックエイドを採り入れるには

まずはトレーニング時に少量から摂取してみて、自分の体にどのように作用するか、しっかりと見定めるようにしましょう。 また、大きな変化が生じた場合は、必要に応じて休息や回復を行ってください。人によっては全く合わないものもあるので、無理して摂取することは厳禁です。

また、同時に摂取する内容によっては、効果を打ち消す場合もあるため、他のエルゴジェニックエイドと併用する場合は注意が必要です。

アンチドーピングを最重要視すること

最後に、アスリートがエルゴジェニックエイドを選ぶにあたって最も重要な点をお話します。 それは、ドーピング陽性となるリスクを極力排除した製品を選ぶことです。

成分表に含まれていなくても、製造工程で禁止物質が混入(汚染とも呼びます)する可能性は決してゼロではありません。過去のドーピング陽性事例でも、汚染が原因となっているケースは少なくありません。

ドーピングリスクに対して、根拠なく安心安全を謳っている商品は国内の製品でも数多く見られます。最近はアンチドーピング認証を取得している商品も見られるようになりましたが、その認証の実態は全数検査ではなく市販後の抜き取りチェックである場合もあります。

参考記事アンチドーピング認証に潜む罠

ドーピングリスクから身を守るのは、正しい知識と信頼のおける製品を選ぶことです。エルゴジェニックエイドを選択する際は、その製品が何故安全と謳っているのか根拠を調査したうえで、採用することをお勧めします。


PPNのサプリメント管理体制について
certification

サプリメント摂取によるアンチドーピング規則違反からアスリートを守る唯一の方法、それは、全製品の、全ロットを、市場に流通させる前に検査を実施することです。

市場に流通させながら全ロット検査を実施しているメーカーはいくつかありますが、アスリートのドーピング陽性リスクを極力排除するためには、全ロット検査でも十分ではないと考えています。

そのため、PPNでは全製品・全ロットに対して、市場に流通させる前に検査を実施するだけでなく、「結果を確認するまで出荷しない」という管理体制を取っています。

この体制を取っているメーカーは世界で唯一弊社しかありません。アスリートにとって栄養摂取は投資であり、ドーピング検査の徹底は保険です。PPNでは「体感」と「安全性」を実現できる製品開発に尽力しています。

詳しくはこちら>>


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