集中力のサポートや競技パフォーマンス向上などに繋がる「 α-GPC(グリセロホスホコリン)」について解説

α-GPC(グリセロホスホコリン)は、脳や肝臓の健康を支える重要な成分で、集中力や認知機能の向上、成長ホルモン分泌の促進、競技パフォーマンスの向上など、幅広い効果が期待されています。

また、アメリカではビタミンとして推奨摂取量が設定されている”コリン”が含まれていて、α-GPCは効率よく速やかに吸収されるため、コリン補給に最適とされています。

本記事では、α-GPCの特徴や効果に加えて、摂取量や副作用についても詳しく解説していきます。

阿久津貴史

著者紹介

パワーリフティング全日本選手権12連覇
NSCA-CSCS・NSCA-CPT/認定スポーツメンタルコーチ

阿久津貴史公式HP

1982年生まれ。元パワーリフティング選手(2023年11月の世界選手権を最後に引退)。2010年〜2023年105kg級日本代表(2021〜2023年団長)。パワーリフティング専門ジム「TXP」を運営。後進育成・コーチングも精力的に行っており、全日本優勝者を多数輩出。アスリートのパフォーマンス向上を目的とした、理想的なエルゴジェニックエイドの開発にも日々尽力している。

α-GPC(グリセロホスホコリン)とは

α-GPCは、コリンの前駆体であり、大豆レシチン(大豆に含まれるリン脂質)の一種であるホスファチジルコリン(PC)から脂肪酸を取り除いた水溶性の化合物です。学名では「sn-グリセロ(3)ホスホコリン」と呼ばれ、GPCとしても知られています。

GPCの性質は以下の通りです。

外観

白色の粉末

風味

無臭で弱い甘みがある

溶解性

水に溶ける

物性

潮解性が非常に高く水溶液は無色透明

α-GPCは、母乳に含まれている成分です。体内での働きが注目されており、認知機能の改善や成長ホルモンの分泌促進、老化抑制、さらには競技パフォーマンスの向上など、さまざまな効果が期待されています。また、門脈を通じて肝臓に効率よく取り込まれ、脳にも迅速に到達することが特徴です。

コリンについて

冒頭でお伝えしたように、α-GPCには「コリン」という成分が含まれています。コリンは、アメリカでは1日あたり成人男性の場合は550mg、成人女性の場合は400〜425mgの摂取が推奨されています。

コリンが欠乏すると肝機能の低下や脂肪肝、代謝関連の栄養素(メチオニン、VB12、葉酸)が欠乏、神経伝達アセチルコリンの材料不足や認知機能脳の低下に繋がります。

α-GPCであれば水溶性なので吸収速度が速く、コリンを1g摂るのに2.5g必要になります。ただし、PC(ホスファチジルコリン)の場合は脂質なので吸収が穏やかでコリンを1g摂るのに7.5g必要となるため、α-GPCは約3分の1の量でコリンを補給できるとされています。そのため、α-GPCはコリン補給に最適と言われているのです。

α-GPCが含まれる食品

α-GPCは、以下のような食品に含まれています。

食品名

α‐GPC量(mg/100g)

鶏レバー(生)

16.0

マグロ(缶詰・水煮)

5.9

バナナ(生)

5.6

キャベツ(生)

2.9

大豆

2.9

アーモンド

1.2

卵(生)

0.6

上記を見てもらえれば分かるように食品に含まれるα-GPCの量は少なく、食品だけで必要量を摂取するのは難しいでしょう。食事だけでなくサプリメントを上手に活用することで効率的に摂取できます。

α-GPCの効果

α-GPCには、認知機能の改善や集中力サポート効果、さらには美容効果など様々な効果があります。ここでは、具体的なα-GPCについて解説します。

認知機能を改善する

まず、α-GPCは認知機能の改善に有効とされており、実際にアルツハイマー型認知症患者に対する研究でその効果が示されています。

研究では、軽度から中程度のアルツハイマー型認知症患者261名を対象に、α‐GPCを1200mg(400mg×3回)/日で180日間摂取させたところ、プラセボ群と比較して認知機能の改善が確認されました。

また、α-GPCは脳内アセチルコリン量を増やす働きがあり、これにより認知症の改善が期待されています。この効果が認められ、ロシア、イタリア、韓国などではアルツハイマー型認知症の治療薬として利用されています。(1)

集中力をサポートする

α-GPCには、 VDT作業時の集中力をサポートする効果もあります。VDT作業時とは、パソコンやスマートフォンなどの、入力装置と出力装置で構成された機器を使った作業のことです。

集中力の向上に関して、学生が1日あたり600mgまたは1,000mgのα-GPCをゲームプレイ1時間前に摂取し、摂取2週間後にNバックタスクを実施しました。Nバックタスクは、一定の間隔で異なる記号が表示される画面で、N個前に表示された記号との一致を判断する測定方法です。

その結果、ゲームプレイ2時間後の回答時間がα-GPC摂取前と比較して短縮し、集中力の向上が確認されました。(2)

注意力を向上させる

α-GPCには、注意力を向上させる効果もあります。注意力向上効果については、まずe-スポーツを行う学生が1日あたり300mgのα-GPCをゲームプレイ1時間前に摂取してもらいました。

その4週間後に、画面にランダムに表示される数字と文字を交互に結ぶ測定方法「トレイルメイキングテスト(TMT-B)」を実施したところ、α-GPC摂取群はプラセボ群に比べ試験時間の短縮傾向が確認されました。(3)

成長ホルモンの分泌を促進する

α-GPCには、一生にわたって代謝調節や認知・免疫機能に関与する「成長ホルモン」の分泌を促進する効果があります。通常、成長ホルモンの分泌量は年齢とともに減少します。

成長ホルモンが減少すると、太りやすくなったり、筋力の低下や肌の悩みなどの要因となります。平均年齢25±1歳の健常な成人8名に対し、1,000mgのα-GPCを単回摂取した研究では、α‐GPC摂取後に血中成長ホルモン濃度が上昇しています。(4)

老化を抑制する

老化促進マウスを用いた研究では、α-GPCを摂取したマウスはコントロール群のマウスと比べて、老化評価スコアが低いだけでなく神経炎症や関節変性の減少も確認されています。(5)

競技パフォーマンスを高める

ボストンマラソンでの選手の血清コリン濃度を測定したことで、激しい運動をすると血清コリン濃度が低下することが分かっています。α-GPCを摂取してコリンを補給することで、血清コリン濃度が低下したことによる競技パフォーマンス低下の改善が期待されています。

また、激しい運動をすると、多くの筋肉細胞が損傷してしまうため、素早く筋肉細胞を修復しなければなりません。そこで、α-GPCを摂取し細胞膜構成成分であるコリンを補給することで、損傷した筋肉細胞の修復を促進する効果が期待されています。

脂肪燃焼を促進する

α-GPCには、単回摂取と継続摂取の両方において、脂肪の燃焼を促進する効果があります。まず、平均年齢23.1±0.6歳の健康な成人9名に対し、1,000mgのα-GPCを単回摂取した30分後にウォーキングを実施した研究では、運動後の脂肪燃焼が促進されたことが確認されています。

また、女性10名(平均年齢66歳)を対象に、α‐GPC 1,000mg/日を4週間摂取し、摂取30分後に30分のウォーキングを週3回実施する実験を行った結果、腹部皮下脂肪に減少傾向が見られました。

アンチエイジング効果

α-GPCには、アンチエイジング効果があることも確認されています。まず、マウスにα‐GPC水溶液(2mg/ml)を7〜70周齢まで自由摂取させたところ、背部のしわ形成が抑制されています。

次に、ヒト皮膚由来細胞にα‐GPCを添加し24時間培養した研究では、コラーゲンとヒアルロン酸の産生促進が確認できています。また、マウスにα‐GPC水溶液(2mg/ml)を4〜22周齢まで継続的に自由摂取させたところ、脱毛が抑制されたことも分かっています。

肝機能障害を改善する

コリンが欠乏すると肝機能障害の指標とされる血漿ALT(GPT)濃度が上昇することが確認されています。コリンは肝臓の健康維持に必要な栄養素であり、α-GPCの摂取によりコリンを十分に補給することで、肝機能障害が改善する可能性があります。

血圧を下げる効果

ストレス時に分泌されるホルモンである「ノルエピネフィリン」には、末梢血管を収縮させる効果があります。ラット大動脈摘出血管片を使用した試験により、α-GPCがアセチルコリン(緊張緩和物質)と同じく、ノルエピネフィリンによる末梢血管収縮を弛緩させることが分かっており、血圧を下げる効果が期待されています。

α-GPCの副作用と注意点

α-GPCは、バナナやヨーグルトなどの食品に含まれており、基本的には安全で副作用もなく、アメリカのFDAも推奨摂取量を定めています。

α-GPCには、身体の細胞膜を作ってくれる「コリン」が含まれています。コリンは必須栄養素ですが、体内で必要量を生産できないため食事から摂取する必要があります。α-GPC1,000mgには400mgのコリンが含まれており、効率的にコリンを摂取できることで知られています。

しかし、2021年に韓国・ソウル国立大学病院が50歳以上の約1200万人を対象に行った大規模調査によると、α-GPCの長期使用は脳卒中のリスク増加と関連がある可能性が示されました。また、動脈硬化の進行を助長する可能性を示唆する研究もあり、長期間の摂取に関しては注意が必要です。(6)(7)

α-GPCの効果を理解して上手に活用しよう

α-GPCは、アスリートにとっても大切な注意力や集中力の向上、競技パフォーマンスを高める機能など、さまざまな効果に注目を集めています。

短期的な使用に副作用や危険性はないものの、長期的な利用にはリスクがある点もしっかりと覚えておきましょう。α-GPCの効果と注意点をしっかりと理解して、賢く活用すると良いでしょう。

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講師は2011年〜2023年の間、全日本選手権パワーリフティング105kg級(フルギアカテゴリー)で12連覇を達成したPPN代表 阿久津貴史(2004年〜NSCAストレングス&コンディショニングスペシャリスト)です。現在は東京都立大学 大学院 人間健康科学研究科 知覚運動制御研究室に所属して、パワーリフティング種目の運動制御に関する研究をしています。

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