
波形 純理
プロテニスプレーヤー。プロキャリア20年目。
大学卒業後、2005年にプロに転向。
世界中を回り、1年半で一気に世界ランキング147位まで上がる。28歳で最高ランキング105位、グランドスラム本戦。今も現役選手として活躍されています。
経歴
インターハイ:団体、ダブルス優勝
全日本ジュニア18歳以下:シングルス優勝
インカレ シングルス、ダブルス優勝
大学王座:優勝
全日本選手権:シングルス準優勝、ダブルス優勝3回、ミックスダブルス優勝
フェドカップ日本代表:シングルス3勝、ダブルス2勝
全豪、全仏:シングルス本戦出場
全豪、全英:ダブルス本戦出場
全豪、全仏、全英、全米:シングルス予選出場29回出場
最高世界ランキング:シングルス105位、ダブルス101位

阿久津 貴史
PPN代表、元パワーリフティング選手。2012年に日本記録を樹立し初優勝して以来、12連覇を達成。2023年の世界大会を最後に現役を引退。
現在は「人間の持つあらゆる能力をいかに高めるか?」という個人的な探究のため、プライベートでは東京都立大学大学院知覚運動制御研究室で研究生活をスタート。NSCA-CSCS・NSCA-CPT(20年以上保持者)/認定スポーツメンタルコーチ
パワーリフティング競技の普及のため、2020年から日本パワーリフティング協会アスリート委員の委員長、東京都パワーリフティング協会の副理事長にも就任し組織運営と大会運営に精力的に携わっている。
また日本人のメンタル・フィジカル・スキルの3要素を極限のレベルに高めるという想いを形にすべく、2012年から東京都練馬区豊玉北にパワーリフティングジム「Team X-treme Power!!!」(TXP)を設立し、選手が成長しやすい環境作りにも尽力している。現在TXPは国内の主要4大大会で団体優勝を20回達成(2024年時点)
テニスを始めたきっかけ

阿久津:波形さん、いつも大変お世話になっております。今回はインタビューへのご協力誠にありがとうございます。
早速ですが波形さんは、プロ生活が20年目ということで、プロとして20年も継続してこられている秘訣なども今日はお聞きできると幸いです。まずは、テニスを始めたきっかけを教えていただいてもよろしいでしょうか?
波形:お世話になります。よろしくお願いします。テニスをやっております波形純理です。
テニスを始めたきっかけは、両親が趣味でテニスをしていて、私も子供の頃から毎日テニスコートへ行ってラケットを持っていました。なので、物心つく前からテニスをしていて、母に4歳の頃からウィンブルドン優勝するようにと言われ続けていました。
自分で立てた目標ではなかったのですが、ただ毎日テニスをしていました。その頃はテニスはあまり好きではなく、雨の日に練習がお休みになるので何よりも嬉しかった記憶があります(笑)
義務のようにやっていましたが今思うと、テニスをする環境は完璧でした。当たり前のように、母のボール出しとお兄さんたちと一緒にテニスをしていました。
阿久津:英才教育だったのですね!開始された頃はお好きでなかったということですが、プロになることを意識されたのは何歳くらいからだったのですか?
テニスにのめり込み始めた時期などあれば、併せて教えていただけますか?
波形:テニスを始めた頃からプロになることに疑問はなかったです。もうそうなると決まっていました。
テニスにのめり込み始めたのは、大学の部活に入ってからです。男女共にプレースタイルやレベルの違う学生がたくさんいて、誰と打つのも新鮮で空いてる時間は誰か見つけては声を掛けて練習をしていました。
卒業後にプロになると決めていたので、意識も高かったと思います。毎朝ランニング、部活、トレーニング、授業、夜部室に戻り練習とスケジュールを練習で詰め込んでいました。
その分、無理をして怪我も多かったですが、痛みより楽しさが増していました。
プロになってからの取り組み

阿久津:子供の頃はテニスのことが好きではなかったということでしたが、学生時代のお話を聞くと目標を決めてご自身で自発的に練習に取り組んで楽しまれている変化が印象的です。
テニスは年間に何試合ほどされているのでしょうか?
波形:コロナ前は年間30大会弱ぐらい試合で世界を回っていました。
だいたい1大会一週間の期間で行われます。その後、体調の変化や、怪我などで、ペースが変わり、今は身体と相談しながらゆっくりやっています。
阿久津:ほとんど年中試合をしている感じなのですね!
コンディション作りがとても重要そうに感じます。身体のケアについて、普段どのような取り組みをされていますか?
波形:テニスは1年中、世界中で試合があるので、オフシーズンはありません。
勝つとポイントが貰えて、そのポイントで世界ランキングが決まるのですが、1年後には消えてしまうため、ポイントを集めるのに必死でした。
オフは自分で決めて取るかたちになるので、昔はオフなしでやっていましたが、今は好きなときにオフを取って、旅行に行くことが多いです。
昔は腰痛持ちだったのでストレッチは得意で、身体はとても柔らかいです。トレーナーのケアもしっかり受けてました。
しかし、人任せではいけないと気付き、ここ数年は自分でケアするようにしています。もちろん専門家のサポートも必要ですが、昔よりも自分の身体は自分でコントロールできるようになってると思います。
阿久津:素晴らしいですね。
ケアをしていても高いレベルで続けていると怪我をすることもあると思います。そのような時の乗り越え方を教えていただけますか?
また、ケアの中で最も効果を実感している方法があれば教えていただけますか?
波形:呼吸と瞑想とヨガは身体と心がとてもスッキリするので、練習や試合後はほぼ必ずしています。気持ちいいですし、リフレッシュできます。
怪我は悪いことではなく、気付きのサインです。身体がそれは違うとサインを出していて、そこから得られることはたくさんあります。
身体と心は繋がっているので、心の方もしっかり見つめ直す必要があると思います。それが分かったとき、怪我に感謝することができ、全てが繋がってプラスのパワーでまた充実した選手生活に戻れます。
阿久津:素晴らしい考え方をお持ちですね。多くのトップアスリートの方にお話を聞いていると、その時はネガティブともいえるような怪我などの経験をいかに次に活かすかということにフォーカスされているように感じます。
その他、リフレッシュするために意識していることや、自分の心と体をリセットする方法があれば教えてください。
波形:いくらでも熱中できるので、テニスに熱中しすぎないことを常に心掛けてます。
でも、テニスのときはテニス!遊ぶときは遊ぶ!とその瞬間を大事にするようにしています。
普段の練習ルーティンについて
阿久津:普段の1週間の練習のルーティンについて教えてください。
またその中で特に意識しているポイント、過去のルーティンから変えたことや、成長のきっかけとなったことなどあれば教えてください。
波形:週に約4〜5回、2時間ほどコートで練習しています。
練習量は昔に比べてかなり減っていますが、その分余白を大事にしていて、内面と向き合う時間を持つようにしています。インナートレーニングや、瞑想、ヨガ、コンディションの時間を多く取っています。
最近はトレーニングとして、フットサルをしています。テニスに熱中しすぎて、トレーニングなどで追い込むことが増えてしまうと、少しずつズレが生じて、心技体のバランスを保てなくなってしまいます。
昔はそれでもやってこれましたが、ピークを超えた後にどのようにまた充実した選手生活を送れるかと向き合ったときに、全てを捨てる覚悟が必要だと思いました
ひとつひとつ手放して、また再構築させていく感じです。
ルーティーンは決めてないので、その日その日の状態で決めるようにしています。
波形:選手を続けるためには変わらなければならないと分かっていても、気付くと今までのやり方に戻っていることが何度もありました。
全てを捨てる覚悟がないと人は変われないです。まだまだ上を目指してやりたいというエゴを捨てる覚悟が、これからの私の成長に大きく繋がると感じました。
阿久津:「気付くと今までのやり方に戻っている」という言葉は誰でも思い当たる節があると思います。
わたし波形さんの言葉がぐさっときました。全く違う考え、行動をすることで違う景色が見れるという風に私も考えています。
試合で最も印象に残っている瞬間について

阿久津:試合の中で、特に印象に残っている瞬間やエピソードはありますか?
波形:プロになって、2年目ぐらいのときですかね。
WTAの大きな大会でしたが、試合中なのに隣のコートのカウントも全て把握できていて、周りが全てが見えていたといいますか、相手の打つところも全て分かるような、何の緊張感もなく、余裕を持って試合をしたことがありました。
あの感覚を今も求めているのかもしれません。
阿久津:フロー状態を体験されたようですね。昔フローについてブログを書いたことがあるのでよかったら参考にしてみてください。
>アスリートなら知っておきたい。フロー理論や入り方について分かりやすく解説。
少し怪我のお話とかぶってしまうかもしれませんが、これまでのキャリアの中で、最も苦しかった瞬間と、それをどう乗り越えたのか教えてください。
波形:一番苦しかった時期は、最高ランキングになったときでした。
上を見過ぎて、自分を見失っていました。それしか見てませんでした。それを諦めたときに楽になり、テニスの楽しさが戻りました。
阿久津:深いお話ですね。成績が優先されて上手になることやいい動きができたことへの喜びとかを忘れてしまっていたということでしょうか。
その経験は、現在の目標にどのように影響していますか?
波形:強くなりたくて、必死に努力して上を目指す。当たり前のことで、充実した練習とトレーニングをしていましたが、何故か試合で思うように身体が動かない…ということがありました。
心理学やメンタルトレーニングなども受けたりしたこともありましたが、何かしっくりこなくて、でもこれだけ真剣にテニスと向き合っていて、これが限界だとは思わなかったし、必ずその先があると、それを探す旅が始まりました。
今後の目標について

阿久津:今後の目標について教えてください。
またその目標を達成するために、今特に注力していることがあれば教えてください。
波形:もう順位的な目標は具体的にはないのですが、今メタフィジカルなトレーニングを受けていて、通常の五感以外の感覚を鍛えています。
目に見えるものが全てではなく、今まで使われていなった感覚を呼び起こすことによって、不可能が可能になっていきます。それはテニスだけではなく、充実した人生を送るために、また、それを人に提供できるようになるために取り組んでいます。
私が充実した選手生活を送る道を、後輩選手たちに作れたらいいなと思っています。周りのため、地球のために活動していきます。
新しい選手のあり方になりますし、伝わらない部分もあると思いますが、見ていていただけたら嬉しいです。必ず納得のいく結果が未来にあります。
阿久津:メタフィジカルというのはどんなトレーニングなのでしょうか?
メタという言葉はメタ認知やメタ分析などに代表されるように一般的には全体を俯瞰するような意味があると思っています。
波形:精神世界に入るとても難しいトレーニングです。
瞑想の中で静かに自分軸に入ってバランスを取り、自分の思考と感情、心理状態をスキャンして、意識的なマインドを使う訓練です。
自分の思考癖とかありますよね。でもそれは今まで育った環境によって作られたものだったり、集合意識からきているものだったりします。また、潜在意識の中にある恐怖や不安を取り除くことも大事です。
潜在意識は現実に反映しますから、それらをクリアにした後に、そこから量子場に入っていき、非人間知性を引き寄せて、人間的な感覚を超えていくトレーニングです。
ちょっと普通ではないお話になりますが、人間が進化するためのトレーニングをしています。
阿久津:ご丁寧に解説していただき有難うございます。自分の思考癖についての理解、とても共感できます。後半の部分に関してはまたぜひ別の機会に詳しくお聞かせいただければ幸いです。
最後に、ファンの皆様へメッセージをお願いします。
波形:読んでいただきありがとうございます。また、新しくホームページを作成しました。
そちらも見ていただけたら嬉しいです。応援よろしくお願いいたします。