競輪選手 伏見俊昭氏インタビュー:一年でも長く現役、S級在籍で活躍したい

競輪選手 伏見俊昭氏インタビュー:一年でも長く現役、S級在籍で活躍したい

スポーツ業界のあらゆる人に焦点を当てて、「魂の叫び」をインタビューする「TOP RUNNER INTERVIEW SERIES」。今回は競輪界のレジェンド、伏見俊昭(ふしみ としあき)選手にご自身が辿ってきたキャリア、経験、今後の目標についてお伺い致しました。長年に渡って最前線で活躍している伏見選手の「考え方」は、多くの読者の方にとって非常に参考となる内容かと思います。お楽しみください!
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インタビュイー

伏見 俊昭

日本競輪学校第75期卒業。日本競輪選手会の福島支部所属。

2001年に函館競輪場でのふるさとダービーを優勝後、上位へ進出。オールスター競輪を優勝し、特別競輪を制覇。その他にもKEIRINグランプリ01など、さまざまな大会で優勝を勝ち取る。

2003年トラックW杯金メダル獲得。2004年オリンピック銀メダル獲得。アジア選手権では3回も金メダルを獲得しています。

現在はS級2班で活躍中。

経歴
最優秀選手賞(2001年)
ワールドメダリスト(2004年)
優秀選手賞(2004年、2007年、2008年)
国際賞(1999年、2002年、2003年、2004年)
特別敢闘選手賞(2009年)
500勝選手賞(2020年)

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インタビュアー

阿久津 貴史

PPN代表、元パワーリフティング選手。2012年に日本記録を樹立し初優勝して以来、12連覇を達成。2023年の世界大会を最後に現役を引退。

現在は「人間の持つあらゆる能力をいかに高めるか?」という個人的な探究のため、プライベートでは東京都立大学大学院知覚運動制御研究室で研究生活をスタート。NSCA-CSCS・NSCA-CPT(20年以上保持者)/認定スポーツメンタルコーチ

パワーリフティング競技の普及のため、2020年から日本パワーリフティング協会アスリート委員の委員長、東京都パワーリフティング協会の副理事長にも就任し組織運営と大会運営に精力的に携わっている。

また日本人のメンタル・フィジカル・スキルの3要素を極限のレベルに高めるという想いを形にすべく、2012年から東京都練馬区豊玉北にパワーリフティングジム「Team X-treme Power!!!」(TXP)を設立し、選手が成長しやすい環境作りにも尽力している。現在TXPは国内の主要4大大会で団体優勝を20回達成(2024年時点)

自転車競技を始めたきっかけ

阿久津:伏見さん、いつも大変お世話になっております。今回はインタビューへのご協力誠にありがとうございます。

早速ですが伏見さんは自転車競技、そして競輪のどちらにおいても輝かしい成績を残されてますが、自転車競技を始められたきっかけについて教えていただけますか?

また、高校生から自転車競技を始められたとお聞きしているのですが、中学生までは何か他のスポーツをされていたのでしょうか?

伏見:​​お世話になります。よろしくお願いします。競輪をやっております伏見俊昭です。

まず、競輪選手になりたいと思ったきっかけは、小さい時に父親に競輪場に連れていってもらい、実際の競技を拝見したことがきっかけだったのですが、ただそれよりも競輪選手の中野浩一さんがプロ競技選手初めての一億円プレイヤーという内容がテレビで放送されていて、その映像がすごく印象的で憧れたというのが一番のきっかけになります。

憧れてからすぐに自転車競技を始めたかったのですが、自転車部が高校からしかなかったため、実際に始めたのは高校に入ってからでした。

高校より前は陸上競技をずっとやっていました。子供の頃から運動が大好きだったため、小3から始め、中学校まで続けていましたが、正直なことを言うと陸上は競輪選手になる為に必要な身体作りや体力を付ける為にやっていました。

阿久津:小さい頃に競輪を見に連れて行ってもらったということですが、その頃から身近に競輪を見る機会があったんですね。そして、高校から競輪を始めるためにまずは陸上競技を始めたという計画性と考えに驚きました。

小さい頃からの計画性や練習の積み重ねがあって実際プロになり、今でも現役として活躍されているということが本当に凄いと思います。

競輪選手としてのルーティンについて

阿久津:では実際に競輪選手としての現在のルーティンについてお聞きできればと思いますが、競輪選手はオフシーズンなく毎月試合に複数回出られているイメージがありますが、伏見選手は年間で何戦されるのでしょうか?

伏見:競輪選手はオフシーズンがない競技なので、土日休みも無ければお正月、ゴールデンウィーク、お盆休みもありません。斡旋は大体月に2〜3本になります。

1つの開催が3日間もしくは4日間になるので、その日程×12回になります。大体の平均としては、90走前後ですが、多い人になると120競争くらい走ります。

もし誰かが欠場した場合の追加斡旋や補充要員として参加することもあるので人によってバラバラですが、大体の数はそのくらいになります。

阿久津:1つの開催ですごい数の競争をされるのですね。例えばちょうど2週間毎に出走される場合だと、その間はどのように過ごされるのですか?

また、開催が終わった翌日、それ以降から次の開催までオフをどう取るのかについて教えてください。

伏見:開催と開催の間は約2ヶ月前には斡旋が出るので、大体のスケジュールを立てています。

昔は完全オフの日は無かったのですが、最近はレースの次の日と週に一度は完全休養を取るように心がけています。それ以外の日はトレーニングと身体のケア、メンテナンスを行なっています。

阿久津:若い頃はオフを取らなかったけど、ベテランになるにしたがってオフの取り方が上手になった、というお話は他競技で長年活躍している選手からも良くお聞きします。

競輪に必要な練習内容やウエイトトレーニングについて

阿久津:では、競技練習や競技練習以外はどのようなことをされているのですか?最近のウエイトトレーニングについてもお伺いできればと思います。

伏見:競技練習のスケジュールとしては、基本は午前中に街道練習、午後からはジムでウェイトトレーニングを行なっています。大体午前中で2時間、午後で2時間くらいの時間をかけてやっています。

街道練習は主にもがき中心の練習で、軽いギヤや重いギヤを使い分けて行なっています。

ウェイトトレーニングは昔ほど重い重量は上げてはいませんが、体幹トレーニングを中心に今までトレーナーさんに教えていただいたものや最近のナショナルチームのウェイトトレーニングなんかを組み入れてやっています。

阿久津:伏見さんのように競輪選手として長年トップで活躍するためには、どのようなことが重要な要素になってきますか?

伏見:長年トップで活躍する秘訣はやはり一番は練習を怠らない事だと思います。努力しないで才能だけで活躍出来るのは若いうちだけだと私は思います。

歳を重ねれば自分の身体と相談しながらのトレーニングになるかもしれませんが、兎に角今日出来る事を妥協なくやり切り、それを持続する事が大事だと思います。

それと身体のメンテナンスも重要です。歳を重ねるほど身体にガタがくるので、そのケアをしっかりとする事もトレーニングと同じくらい大事になってきます。

それとメンタル面の管理も大事です。気持ちで負けてしまえばそれまでですし、気持ちだけは切らさないようにすれば、勝つ為の努力も惜しまないと私は思います。

阿久津:すごく響くお話です。先日、私の業界の先輩(第一線で大活躍されている方)とお話をしたのですが、その方からは「みんな調子の良い時は頑張るけど調子悪くなると細かいこと含めて全部頑張らない、でも俺は調子が悪い時にも全てやってきた」というお話を聞いて感銘を受けました。

伏見さんがおっしゃった「今日出来る事を妥協なくやり切り、それを持続することが大事」というお話と重なる部分があるなと思いました。

年齢を重ねることで変化した練習内容や生活について

阿久津:伏見さんは今年で48歳になられて、年齢と共に練習内容や生活等を変えてこられましたか?どのような変化があったのかについてもお伺いできればと思います。

伏見:練習の内容は明らかに若い時に比べて量が落ちてきたとは思います。年齢を重ねてくると誰でも体力が落ちてくるもので、それは仕方ない事だと思います。その分、質に拘った練習になってきてると思います。

"ここまでやればこのレベルで戦える"という感覚も長年の経験で分かってきますし、プラスα少しでも今の自分を超える為のものも取り入れたりしていますので、やれるべき範囲を一生懸命やる事が大事かなと思っています。

生活の面では若い時にとれなかったプライベートの時間を作ったり、日々のストレスを解消するために好きな事をやったりするのも大事かなと思い、取り入れたりしています。

阿久津:「プラスα少しでも自分を超える為のものも取り入れる」という内容がとても響きました。

長年選手生活をしていると練習の変化を避ける傾向がある方もいらっしゃると思うのですが、そういうチャレンジングな姿勢が今の伏見さんを作っているのでしょうね。ちなみにストレス解消のためにされていることをお聞きしてもいいですか?

伏見:ストレス解消法はやはり楽しい事をするということだと思います。私は子供がまだ小さいので家族でお出掛けをしたり買い物に行ったり、たまに仲間内で飲みに行ったり、麻雀をしたりするのもストレス解消法の一つになっていると思います。

美味しい物を食べてストレス解消という方法は、私には当てはまらないので食への拘りは人より少ないかもしれません。ただ、食べ放題のメニューにありつくとなんとか元をとろうとしてついつい食べ過ぎてしまい、逆に体重を落とさなきゃという変なストレスが溜まる事もたまにあります。

阿久津:やはり楽しい事をするって大事ですね!

今後の目標「一年でも長く現役、S級在籍で活躍したい」

阿久津:では次に、伏見さんは特別競輪10回優勝、アテネオリンピック銀メダル、通算500勝など、全て書いたらきりがないほどの輝かしい成績を残されてきています。今後に関しての目標をお聞かせいただけますか?

伏見:今後の目標は、やはり一年でも長く現役で居続けること、そしてS級として在籍出来るように頑張りたいと思います!

目先のレースは常に1着を目指し、通算勝利度数も増やしていければと思います。その為にも怪我や病気をせず、日々のトレーニングを積み重ね、少しでも良いコンディションでレースに望める事を心掛けていきたいと思います。

阿久津:伏見さんの今後益々のご活躍、心より応援しております!本日はインタビューへのご協力誠に有り難うございました。最後にファンの皆様へコメントをお願いします。

伏見:ファンの皆様へ

これからも競輪選手として1日1日を大事にやっていきたいと思います。

現役を引退するまでが勝負ですので、それまでは妥協する事なく、自分自身との戦いになりますので皆様からの声援や応援がとても力にもなります。今後とも末永く応援していただけたら嬉しく思います。


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