ゴールデンタイムより大事なこと

ゴールデンタイムより大事なこと

 

 

 

1990年代頃からトレーニング後、筋肉の回復と成長を最大限に引き出すためには、何をどのタイミングで摂取するかが重要と考えられてきました。しかし最近では「ゴールデンタイム」概念(海外では「アナボリックウィンドウという)」に基づくプロテイン補給は必ずしも最適ではないことが新常識として広まってきています。

 

より効率的な栄養戦略を考えるための知識を整理していきます。



IVYの研究

1988年に実施されたIVY(1)の研究はアナボリックウィンドウの前進的な研究と言われています。IVYの研究では運動後の炭水化物の摂取タイミングが筋グリコーゲン回復にどのように影響するか調査されました。この時に得られた「運動後はすぐの栄養補給が有効」という知見が、その後に筋タンパク質合成の促進のためにも運動後できるだけ早めにタンパク質補給をした方が良いのでは?という発想につながっていきます。

 

その後のアナボリックウィンドウに関する研究で注目しておきたい点は、遊離アミノ酸を使用している研究が多いことです(2)。

 

このような研究を背景に、日本のフィットネス業界においては筋肉が最も栄養を効率よく吸収する「特別な時間帯」を表現するためにテレビ業界の「ゴールデンタイム」を転用してこの栄養摂取パターンが自然と広まったのでしょう。



研究との乖離

この頃に研究と現場との乖離が広まっていったのではないかと考えられます。先ほども記載したように運動後のタンパク質摂取の研究の多くは遊離アミノ酸を用いたものだったのですが、現場では「トレーニング後30分以内にプロテインを摂取する」という形で浸透しています。ホエイプロテインは血中アミノ酸濃度がピークに達するまでに約90分かかり、アミノ酸とは吸収スピードが全く違います。



最近の動向

また最近では筋トレ後48時間はタンパク質の合成率が高まるので(3)、摂取タイミングを気にするより、まず1日で摂取する総タンパク質量が重要で(4)という考えも普及しています。これはある意味当然のことで、筋肉量を増やしたいのであればまずは総タンパク質量をしっかり確保することが基本です。基本ができていないのにゴールデンタイムだけ頑張ってもなかなか結果に結びつかないでしょう。

では基本ができている場合はどうするのか?というとそこはタイミングや組み合わせに拘っていく必要があります。筋タンパク質合成率の高い時間帯は運動直後から48時間継続するからといって細胞が最も栄養素を取り込みやすい運動直後から数時間内の時間帯をみすみす逃すわけにはいきません。



アスリートにとって最適な戦略

また運動量の多い競技アスリートはタンパク質だけ摂取すればいいというわけではなく、リカバリーのために少しでも早く筋グリコーゲンを回復させる必要があります。炭水化物の摂取に関しては遅れるほどリカバリーの遅延に直結します。以下により効果を発揮するポイントを上げます。

 

・筋グリコーゲンの回復のためには炭水化物単独摂取よりタンパク質の混合摂取が有効。

・ゴールデンタイムよりも運動前からこの栄養補給を開始した方が良い。

・運動時間が長くなるほど運動前の摂取ではカバーできないので運動中に炭水化物とタンパク質の混合物を継続的に摂取し続けた方が良い。

 

運動中に炭水化物とタンパク質の混合物を継続的に摂取することで筋グリコーゲンの消費とタンパク質の異化が抑制されます。短時間運動であればここまでする必要はありません。00X’AAA+ALPHAをお飲みいただいている皆様はまさにこの戦略を実施していただいているわけです。

 

身体の反応を理解すると効果的な栄養戦略が分かりますよね。トレーニング効果を最大化し、パフォーマンスを向上させるためには、最適な栄養戦略が必要です。最新コンセプトを活用しさらなるレベルアップを目指してください。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

引き続き10月も何卒よろしくお願いいたします!


阿久津貴史


参考文献

(1).IVY, JL. et al., : MUSCLE GLYCOGEN-SYNTHESIS AFTER EXERCISE - EFFECT OF TIME OF CARBOHYDRATE INGESTION.Journal of Applied Physiology.1988


(2).Rasmussen, BB. et al.,:An oral essential amino acid-carbohydrate supplement enhances muscle protein anabolism after resistance exercise.Journal of Applied Physiology.2000


(3)Phillips, SM.et al.,:Mixed muscle protein synthesis and breakdown after resistance exercise in humans.American Journal of Physiology-Endocrinology and Metabolism.1997


(4).Morton, Robert W. et al.,:A systematic review, meta-analysis and meta-regression of the effect of protein supplementation on resistance training-induced gains in muscle mass and strength in healthy adults.BRITISH JOURNAL OF SPORTS MEDICINE.2018


(5)Tipton, KD.et al.,:Timing of amino acid-carbohydrate ingestion alters anabolic response of muscle to resistance exercise.American Journal of Physiology-Endocrinology and Metabolism.2001


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