約2キロの距離を圧倒的なスピードで走り抜ける競輪。最高速度に到達すると、時速およそ70㎞に達します。これほどのスピードの中で、時には選手同士が体をぶつけながら激しいバトルを繰り広げます。競技中の事故で死亡した選手もいるほど、苛烈で危険な競技です。
それゆえに多くのファンを魅了してやまないわけですが、一番の魅力はやはり迫力あるスピード。剛脚で知られる数々の選手が競輪史に残る名勝負で観客を沸かせてきました。
ギリギリの勝負を制するためには技術面・肉体面の両方で高い水準が求められますが、競輪選手に求められるフィジカル要素は具体的にどのようなものがあるのでしょうか?
また、パフォーマンスを向上させるための栄養・サプリメント戦略はどうするべきなのでしょうか?PPNのサプリメントを愛用している競輪選手の意見もふまえ、今回の記事ではこれらの点について考察してみようと思います。
著者紹介
パワーリフティング全日本選手権12連覇・現日本記録保持
NSCA-CSCS・NSCA-CPT/認定スポーツメンタルコーチ
阿久津貴史 (公式HP)
1982年生まれ。パワーリフティングの競技者として活動するとともに、パワーリフティング専門ジム「TXP」を運営。後進育成・コーチングも精力的に行っており、全日本優勝者を多数輩出。アスリートのパフォーマンス向上を目的とした、理想的なエルゴジェニックエイドの開発にも日々尽力している。
競輪選手に求められるフィジカル要素
まず、自転車競技において、パフォーマンスを測る指標に「パワー」という概念があります。ここで言うところのパワーとは、単にペダルを押す力のことを指すのではなく、「ペダルにかかる力とクランクの回転速度の掛け算」で表されます(1)。
つまり、いくら大きな力をペダルにかけてもクランクを回転させることができなければパワーは出ません。反対に、軽い力でもクランクを効率的に回すペダリングをすれば、パワーは大きくなるわけです。
このパワーを最大限に出力させる能力(最高速度)、そして瞬発的にパワーを発揮する能力(加速)が、競輪選手にまず求められる要素です。
近年では、パワーを測定するパワーメーターが開発されたことにより、競輪を含む自転車競技の定量的なデータが多く収集され研究され、必要な要素についても競技時のデータを基に論じられるようになりました。
これらの研究によると、パワーを発揮するためには、筋肉の大きさ、筋繊維タイプ(速筋 or 遅筋)の比率、ペダリング動作や姿勢、そして疲労に依存するとされています(2)。
1:必要とされる筋肉
筋骨格の部位とパワーの関係を調査した過去の研究によると、最大座位等速サイクリング(120 rpm)中にペダルに伝達されるパワーの49%が膝で、32%が股関節で、9%が足首で生成され、9%が股関節を越えて伝達されているという結果が得られています(3)。
この研究では、速度が増すにしたがって、足首の背屈動作(足のつま先を足背(足の甲)に曲げる動作)で生成されるパワーの比率は減少し、一方で股関節の伸展や膝の屈曲動作で生成されるパワーの比率が上昇すると報告されています(膝の伸展動作による比率は速度が変わっても変化しない)。
また、筋機能MRIをつかって最大スプリントサイクリング中の大腿筋の動員パターンを調査した研究では、パワーの総出力は、特に大腿内側広筋と大腿中間広筋の活動が相関しているとされています(4)。
つまり、大腿内側広筋と大腿中間広筋を使って、股関節や膝から大きな力を出力させることが競輪選手には求められ、これらの筋肉群を正しく発達させることが競輪のパフォーマンスアップに結びつくと考えられます。
また、動員する筋肉が主に速筋繊維で占められている選手はスピードや加速に優れており、競輪という競技の特性上、優位であるといえます。その裏付けとして、外側広筋における速筋繊維の断面積の割合とペダリングのパフォーマンスには高い相関があるという研究結果もあります(5)。
2:ペダリング動作
競輪では、上記の筋肉から生み出された力をできるだけ効率よくクランクの回転力に変換するようなペダリング動作が求められます。
ペダリングの動作においては、大腿部前面の大腿直筋、背面の大腿二頭筋長頭の収縮タイミングが重要で、大腿直筋が収縮される際、大腿二頭筋長頭は伸長させられることが好ましいとされます。
逆に、前面と背面の筋肉が同時に収縮すると、伸長動作が妨げられてパワーを発揮しづらくなります(6)。
よりパワーを効率的に発揮するペダリング、すなわち踏み込み動作から引き上げ動作へスムーズに移行する動作のためには、上記の筋伸長・収縮タイミングを最適化させたペダリング動作を行う必要があります。
3:筋疲労と持久力について
パワーを最大限に出力させる能力(最高速度)、瞬発的にパワーを発揮する能力(加速)に続き、競輪選手に求められる重要なフィジカル項目が「持久力」です。
一口に持久力といっても、競輪の場合は長距離を走る力ではなく、最高速度を維持するというスプリント特有の持久力が求められます。そして持久力を上げるためには、高強度の運動に対しても疲労が起こりくい筋肉を作る必要があります。
では何故筋肉は疲れるのか?高強度運動時においては、以下のようなメカニズムが考えられています。
よく「乳酸が溜まる」という表現をしますが、 最近の研究ではもう少し詳しい機序が明らかになってきており、筋疲労の原因として、乳酸が作られる過程で発生する水素イオン(プロトン)などの作用で、筋肉のpHバランスが酸性に傾くことが筋疲労の一因と考えられています(7)。
また、競輪のような高負荷運動の場合、筋収縮に必要なエネルギー(ATP)は急激に減少するため、それが筋疲労に影響するということも指摘されています。また、筋収縮のためにATPが消費された際に生じる無機リンが筋疲労の原因となるとも言われています。
持久力を上げるためには、トレーニングも非常に重要ですが、上記のメカニズムを抑えて筋疲労を起こりにくくするような栄養戦略も大切になってきます。
競輪選手のパフォーマンスを上げるサプリメント戦略
スプリント系の競技におけるパワーやスピードは天性による部分が多く影響しますが、スプリント系の持久力は戦略次第で大きく改善できる部分です。
そこで、ここでは特に競輪選手におすすめしたい成分を紹介します。アスリート向けサプリメントとして、様々な種類の製品が販売されていますが、その中でもお勧めしたいのはエルゴジェニックエイドの二大巨頭ともいえる以下の成分です。
①クレアチン
競輪のような高負荷運動や高速運動のパフォーマンス・持久力を高めたい場合、まず挙げられる成分が「クレアチン」です。競技の特性と合っているため、トップ選手の中でも使用している割合が多い成分です。
クレアチンは、短時間の高強度の身体活動のパフォーマンスを向上させるためのエルゴジェニックとして、競輪以外の高強度運動を持続する競技においても様々なアスリートに使用されている実績があります。
クレアチンを摂取すると、筋肉におけるホスホクレアチン総含有量が増加します。これにより、サイクリングのスプリント中に迅速なエネルギー代謝を提供するホスファゲン機構( ATPを無酸素で再合成する体内システム)の能力が増加することが裏付けられています(8)。
②ベータアラニン
ベータアラニンも、競輪選手のパフォーマンスアップにお勧めしたい成分です。ベータアラニンはカルノシンの前駆体(物質が生成する前の段階の物質)です。
カルノシンはヒスチジンとベータアラニンが結合して形成されるイミダゾールジペプチドで、主に骨格筋に含まれています。体内でのカルノシンの合成は、ベータアラニンの摂取によって増やすことが可能です。
カルノシンは、筋肉に直接作用し疲労を遅らせます。また、乳酸の蓄積で酸性化する筋肉の回復を促します(9)。
PPN 099'CREATINE THE ONEの紹介
099'CREATINE THE ONEはクレアチンとベータアラニンの両方を配合させることで、瞬発系パフォーマンスと高強度パフォーマンスの持続力を向上させることを目的として設計された製品です。
競輪では、坂本 貴史と高橋 晋也選手が099'CREATINE THE ONEを使用しており、「飲んでると芯から力が入る感じ(坂本選手)」「飲み始めてから芯から力が入るようになった(高橋選手)」とサプリメントの効果について2人とも同様の効果を体感しているようです。
また、持久力については「乳酸が溜まりにくくなっている感じがして、今までより長く動けるようになった(高橋選手)」とのコメントもいただいています。
詳細については、商品ページに記載されておりますので、是非ご覧ください。
PPNのサプリメント管理体制について
現在市場で販売されているスポーツサプリメントは、たとえインフォームドスポーツを取得していても、市場に流通させながら検査を実施しているのが通常です(全ロット検査を実施しているが、検査結果を待たずして出荷している)。
しかしながら、アスリートのドーピング陽性リスクを極力排除するためには、全ロット検査でも十分ではないと考えています。そのため、PPNでは全製品・全ロットに対して、市場に流通させる前に検査を実施するだけでなく、「結果を確認するまで出荷しない」という管理体制を取っています。