テニスの競技パフォーマンスを上げるために有効なサプリメント

テニスという競技を「運動強度」「運動の持続時間」という軸で観察すると、強度の高い運動と強度の低い運動が断続的に組み合わさっている点が特徴といえます。

相手が打ってきたボールの軌道に回りこんだり、強いボールを打ち返すためには高強度の運動が必要です。また細かなステップや軽いスイング、ポイント間やチェンジコート間の移動など、低強度の運動も組み合わさっています。

また「競技パフォーマンスに影響する要素」という観点で見ると、身体的な要因や技術だけでなく、戦術や心理的要因など身体以外の要素も競技パフォーマンスに影響を与えるという点が特徴です。

これらの特徴から、より良いパフォーマンスを発揮するには、高い瞬発力(特にアジリティ)、持久力、戦略的頭脳、集中力の維持が求められます。そのためにはトレーニングはもちろん、戦略的な栄養摂取が特に重要になり、サプリメントの活用を視野に入れている選手も少なくありません。

テニス競技のパフォーマンス向上のためにサプリメントは使用するべきなのでしょうか?また使用するとしたらどのようなサプリメントを選択するべきなのでしょうか?

過去の研究やプロテニス選手のコメントも交えて説明していきます。

阿久津貴史

著者紹介

パワーリフティング全日本選手権12連覇・現日本記録保持
NSCA-CSCS・NSCA-CPT/認定スポーツメンタルコーチ

阿久津貴史公式HP

1982年生まれ。パワーリフティングの競技者として活動するとともに、パワーリフティング専門ジム「TXP」を運営。後進育成・コーチングも精力的に行っており、全日本優勝者を多数輩出。アスリートのパフォーマンス向上を目的とした、理想的なエルゴジェニックエイドの開発にも日々尽力している。

はじめに

結論から申し上げると、サプリメントの摂取は競技パフォーマンスを上げるために有効であり、他の競技と比べても高い割合でサプリメントが活用されているという研究結果があります(1)。

しかしながら、とにかくサプリメントを摂取しさえすればパフォーマンスが上がるというわけではありません。どんな目的で、何のサプリメントを摂取するのか、使用する選手自身がしっかりと把握しておく必要があります。

前提として知っておきたい「ダイエタリーサプリメント」と「エルゴジェニックエイド」という分類

一口にサプリメントと言っても、食事だけでは不足する栄養素を補う目的で摂取する「ダイエタリーサプリメント(Dietary Supplement)」と、スポーツにおける競技パフォーマンスを向上させる目的で摂取する「エルゴジェニックエイド(Ergogenic Aids)」があります。

ダイエタリーサプリメント:たとえば、筋肉の発達・維持にはたんぱく質が欠かせませんが、アスリートの場合は通常の人と比べると多くの量が必要になります。

高強度かつ高時間のトレーニングを日々行うテニス選手場合、タンパク質摂取ガイドラインは体重1kgあたり1.6 gとされていますが(2)、食事から摂取できる量には限界があります。

そこで、足りない分をプロテインなどのダイエタリーサプリメントで補うというわけです。

エルゴジェニックエイド:ダイエタリーサプリメントが「足りない量を補う」という観点で摂取するものである一方で、エルゴジェニックエイドは「パフォーマンスを引き上げる」という観点で摂取するものになります。

プロテニスの試合では、身体パフォーマンスとメンタルパフォーマンスが高い水準で求められますが、試合時間も長いことからそれらのパフォーマンスを維持することも重要になります。

最高峰であるグランドスラムでは5セットマッチ形式であり、多くの場合試合時間は2時間を超えます。フルセットにもつれると3時間超えは普通、接戦となると5時間に及ぶこともあります。さらに、これらの試合を経て優勝するためには、約2週間のあいだに決勝戦を含めて7試合を戦う必要があります。

そこで、多くのトップテニスプレーヤーはエネルギーの維持や、持久力・リカバリーの向上が期待できるエルゴジェニックエイドを摂取するというわけです。 

トップ選手がサプリメントを使用する割合と摂取理由

では、トップ選手がこれらのサプリメントを使う割合はどの程度で、どのような理由で摂取しているのでしょうか?

プロテニス選手のサプリメント使用について調査した過去の研究(3)では、プロのテニス選手の81.3%がダイエタリーサプリメントまたはエルゴジェニックエイドを摂取しているという結果になっています。この数字は、他の間欠的高強度競技(バスケットボールなど)と比べても、高い値です。

また、サプリメントを使用する目的としては主に2つ、効率的なリカバリーとエネルギーレベルの維持が挙げられています。この研究では世界ランキングトップ100(T100)のテニス選手とトップ100外(OT100)の選手の使用理由が調査されており、以下のような結果となっています。

※T100選手の内アンケート協力者は8人、OT100の内アンケート協力者は63人。T100の人数が少ないのはトップランカーほどアンケート収集が難しいと予想されます。

①リカバリーのためにエルゴジェニックエイドを摂取

T100選手の50%(4人)とOT100選手の59.4%(38人)が、インターバルにおける回復を目的としてサプリメントを使用しています。これは、テニスのような断続的なスポーツにおいては特にリカバリーが重要な要素であるといえます。

②エネルギーレベルの維持のためにエルゴジェニックエイドを摂取

T100選手の50%(4人)とOT100選手の43.5%(28人)が、エネルギーレベルを維持するためと回答しています。エネルギーレベルとは、競技中に体内のエネルギー資源を効果的に活用し、パフォーマンスを維持することを指します。

③その他

栄養不足の予防:T100選手の25%(2人)とOT100選手の9.4%(6人)が、栄養不足を防ぐためにサプリメントを使用しています。

健康維持:T100選手の12.5%(1人)とOT100選手の37.5%(24人)が、健康を維持する目的でサプリメントを使用しています。

免疫力向上:免疫力を高める目的でサプリメントを使用しているのは、T100選手の12.5%(1人)とOT100選手の6.3%(4人)です。これらの3項目は、ダイエタリーサプリメントの摂取となります。

肉体改善:筋肉量を増やす目的でサプリメントを使用しているOT100選手が31.3%(20人)いますが、T100選手には0%(0人)です。またシェイプアップのためにサプリメントを使用しているのは、OT100選手の9.4%(6人)で、T100選手には該当者はいないという結果になっています。

つまり、トップ選手の場合はダイエタリーサプリメントよりもエルゴジェニックエイドを摂取する傾向にあり、リカバリー(例えば、ポイント間のアクティブリカバリーやゲーム間のパッシブリカバリー)の向上や、エネルギーレベルの維持を目的とする場合が大半といえます。

また一部のOT100選手は、体形や体質の向上のためにダイエタリーサプリメントを使用していることが報告されていますが、T100選手にはこのような理由は見られません。これは、上位ランクの選手がパフォーマンス向上に重点を置き、外見よりも機能性を優先してエルゴジェニックエイドを摂取していることが示唆されています。

どんなサプリメントを使用しているか?

ではここから、上記の研究におけるプロテニス選手のエルゴジェニック摂取状況を紹介します。ここでは、トップ100(T100)の選手とトップ100以外(OT100)の選手による使用頻度(パーセンテージ)と、その統計的な有意差(p値)が示されています。

クレアチン

T100選手の75%(6人)がクレアチンを使用していますが、OT100選手では11.1%(7人)のみです。この大きな差には統計的な有意差があり(p値 = 0.001)、これはT100選手の方がクレアチンをは多く使用していることを示しています。

カフェイン

T100選手の50%(4人)がカフェインを使用しているのに対し、OT100選手では11.1%(7人)です。この差にも統計的な有意差があります(p値 = 0.042)。つまり、T100選手はOT100選手よりもカフェインをより多く使用しているという結果です。

L-カルニチン

T100選手には使用されていませんが、OT100選手では7.93%(5人)が使用しています。この差には統計的な有意差はありません(p値 = 0.412)。

L-アルギニン

T100選手の12.5%(1人)とOT100選手の4.76%(3人)がL-アルギニンを使用しています。ここでも統計的な有意差はありません(p値 = 0.211)。

重炭酸ナトリウム

T100選手には全く使用されておらず、OT100選手での使用率は4.76%(3人)です。ここでも統計的な有意差はありません(p値 = 0.532)。

ベータアラニン

T100選手には使用されておらず、OT100選手での使用率は3.17%(2人)です。ここでも統計的な有意差はありません(p値 = 0.612)。

総じて、クレアチンとカフェインはT100選手の間で顕著に高い使用率を示しており、高いレベルの選手によって特に好まれていることが分かります。他の成分については、使用率に大きな差は見られませんが、全体的にはT100選手の方がエルゴジェニックエイドの使用に積極的である傾向があります。

PPNがテニス選手におすすめしたいサプリメント

上記の結果を鑑みても、高いレベルのステージで戦う選手ほどエルゴジェニックエイドの活用が一般的になるといえます。

その中で、多くのトップ選手に指示されているのがクレアチンです。また、競技特性を考慮すると、筋肉に直接作用し疲労を遅らせる効果のあるベータアラニンも有効といえます。

クレアチンとベータアラニンは、エルゴジェニックエイド分野において多数の研究で効果が確認されている「2大素材」ともいえますが、これらを同時摂取できる099'CREATINE THE ONE.2.0は競技中のパフォーマンス維持を強力にサポートすることが期待できます。

また、テニスだけでなく他の競技でも多くのアスリートに指示されているエルゴジェニック製品として、00X’AAA+ALPHAがあります。

グランドスラム本戦への出場経験もある波形純理選手も、00X’AAA+ALPHA摂取によるスタミナ維持についてコメントしており(詳しくはこちら)、テニスのトップ選手にも有用であることを示していただいています。

サプリメントの選択にあたって、一番重要なこと「アンチドーピング」

もちろん、それぞれの選手によって体質や目的が異なるので、上記以外のサプリメントの中にも効果の大きいものが見つかるかもしれません。自分の体と対話しながら、サプリメントを選定することが重要といえます。

しかしながら、ことアスリートの場合に一番重要なのは「アンチドーピング」を徹底している商品かどうかです。製品にはアンチドーピングが謳われていても、その実態はいつ禁止物質が混入してもおかしくないようなものがあります。

ドーピング検査対象となる選手は、自己防衛のためにアンチドーピング認証を取得している商品を正しく選ぶ必要があります。

世界アンチ・ドーピング規程では、アスリートは「自分の摂取物及び使用物に関して責任を負う」とされています。そのため、仮に意図せぬドーピング陽性が起きた場合は、責任を逃れることはできません。


PPNのサプリメント管理体制について
certification

現在市場で販売されているスポーツサプリメントは、たとえインフォームドスポーツを取得していても、市場に流通させながら検査を実施しているのが通常です(全ロット検査を実施しているが、検査結果を待たずして出荷している)。

しかしながら、アスリートのドーピング陽性リスクを極力排除するためには、全ロット検査でも十分ではないと考えています。そのため、PPNでは全製品・全ロットに対して、市場に流通させる前に検査を実施するだけでなく、「結果を確認するまで出荷しない」という管理体制を取っています。

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講師は2011年〜2023年の間、全日本選手権パワーリフティング105kg級(フルギアカテゴリー)で12連覇を達成したPPN代表 阿久津貴史(2004年〜NSCAストレングス&コンディショニングスペシャリスト)です。現在は東京都立大学 大学院 人間健康科学研究科 知覚運動制御研究室に所属して、パワーリフティング種目の運動制御に関する研究をしています。

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